「アメリカの正義なんて何処にも無い」ゼロ・ダーク・サーティ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの正義なんて何処にも無い
実際にあったビンラディン暗殺計画を描いた衝撃作。
監督は「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー。
骨太でスリリングな演出は健在。
「ハート・ロッカー」はオスカーを受賞した秀作だが、実は、個人的にあまり好きではない。
勿論、ビグローの演出、緊迫感溢れる展開などは圧倒されるが、そのヒリヒリするほどのリアリティが見る者を寄せ付けず、結局最後まで乗れなかった。
なので、本作も見る前は抵抗あったのだが…
非常に見応えあった。
扱った題材や拷問シーンが問題視されるなど確かにハードな内容だが、「ハート・ロッカー」よりエンタメ性を感じた。
CIAが標的を追う展開はスパイ映画のようでグイグイ引き込まれ、知られざる史実は興味深い。
加えて、映画のクオリティの高さは保証付き。
そして、作品の源と言っても過言ではないのが、主演のジェシカ・チャスティン。
この存在感、パワフルな演技は、これぞ主演女優。正直、本作を気に入った要因かもしれない。
冒頭、拷問にも目をそらしていたマヤが、やがて狂気にも似た執念に取り憑かれていく様は恐ろしくもある。重た過ぎる任務は、それこそ麻薬そのものだ。
彼女のラストカットは印象に残る。
あの涙は何の涙か。
全てが終わり、任務という麻薬から解放された彼女の今後は…?
非道なテロを起こした首謀者を捕まえる。
テロには屈しないアメリカの正義のようでもあるが、拷問、精神がボロボロになるまでの執念、正義という名の報復など、理想である正義は何処にも無い。
これは、アメリカの闇である。
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