「「社会現象」ではなく「社会問題」を引き起こした映画」ゼロ・ダーク・サーティ s'il vous plaît!さんの映画レビュー(感想・評価)
「社会現象」ではなく「社会問題」を引き起こした映画
CIA局員の活動を描く実話に基づいた作品と言うところだけを取れば「アルゴ」と同じ種類の映画.
証言に基づいたノンフィクションということだったので「アルゴ」のようにCIAの功績をたたえる映画なのかと思ったが,まったく違った.
この映画は決して特定の人物に感情移入させるような方向に観客を誘導するような作り方はしておらず,あくまでもCIA局員の女性の様子を中心に事実を淡々と描写することで,ビンラディン殺害作戦という世紀の大捕り物の全貌を明かしていく.とくにクライマックスはスリル満点.作戦の結果は既に知っているのに,思わず見入ってしまう.クライマックスだけでもチケット代の元は取れる
そして最後まで作り手の作戦に対する明確な主張が打ち出されることはなかったように思った.それでもビンラディン殺害作戦とは何だったのか,正義とはいったいなんなのかなどなど,見る側に提起された問題は結構多かったように思った.158分と長尺の映画だが,見終わってからも考えることが多く,非常に長時間味わえる映画だった
PS.ニュースでは既出の通り,この作品,拷問描写が大きな議論を巻き起こしアメリカ議会でも問題として取り上げられました.当事者へのインタビューに基づく映画であればこそできる,社会に向けた問題提起なのかもしれないとおもいます.
「社会現象」になる映画はすくなからずありますが,作品それ自体が「社会問題」となって議論の的となるような映画は珍しいなぁ.
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