「長いプロセス」ゼロ・ダーク・サーティ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
長いプロセス
Zero Dark Thirtyは2011年5月2日0時30分に決行されたビン・ラディン隠れ家襲撃作戦(ネプチューン・スピア:海神の槍作戦 )の時刻だろう。2001年の9.11から実に10年の月日が経っていた。CIAの趨勢としてテロの未然防止が主眼でありビン・ラディン捜索は半ばあきらめていたのだろう。
今やビン・ラディン暗殺は衆知の事実、殺害がCNNで伝わるとワールド・トレードセンター跡地には数千の群衆が集まり歓声を上げたらしい。結末が分かっているのだからプロセスを描くしかないのは分かるが2時間半は長すぎる、CIA内部の硬直性、拷問シーンといい襲撃での家人殺害など批判覚悟の問題提起で復讐劇の美化にならないようにしているのもキャスリン・ビグローらしい。映画では描かれなかったが予防接種と偽って屋敷に入ったことから予防接種の慈善団体関係者が襲撃事件後に過激派に殺されたらしい。
最後のマヤ(ジェシカ・チャステイン)の表情が暗くみえたのは象徴的だった。
脚本のマーク・ボールは襲撃作戦の実行部隊の表彰式に潜り込んだり、関係者への隠密取材でプロットを書いたらしい、ビン・ラディンのインタビューを制作したCNNのピーター・ベルゲンも監修として参加したらしいがどこまで真実か、一説にはビン・ラディンはパキスタン政府に軟禁されていて情報部の元高官(ウスマン・ハリッド准将)がCIAに売ったらしい、いずれにしても50年後の機密文書公開まで謎のままである。
悲しいかな首謀者を消して面子は立ったろうがテロは無くならない、生き延びた息子は後を継いで過激派を率いていたがトランプ大統領は2019年9月14日ビン・ラディンの息子ハムザをテロ掃討作戦で殺害したと発表した、負の連鎖は絶たれたのだろうか・・。