劇場公開日 2013年5月11日

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探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 : インタビュー

2013年5月10日更新
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大泉洋が何よりも重んじる継続性の真意に迫る

大泉洋は「継続性」を重んじる。「始めたことを終わらせたくない、ずっと続けていたい人なんですよ」と言ってはばからない。事実、テレビ、ラジオを含めすべてのレギュラー番組が10年以上続いている。だが、映画やドラマなど俳優の仕事は、撮影が終わればスタッフ、キャストは離れ離れになってしまうのが常だ。そんなジレンマを解消してくれたのが「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」。しかも、愛する地元・北海道が舞台の主演映画の続編とあれば、テンションが上がらないはずはない。浮き立つ心が映像で見えてきそうな“大泉節”が、耳に心地良く響いた。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

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「映画やドラマは1カ月、2カ月撮影すると、そこでお別れになる。そこがいつも寂しいんです。だから今回、シリーズになってまた集まれるっていうのがすごくうれしくて。松田(龍平)くんに1年半か2年に1回会って、一緒に2カ月ビッシリいられるのがすごく楽しいんですよ」

しみじみ語る大泉の表情は本当にうれしそうで、撮影時の光景が鮮明によみがえっているようだ。

札幌在住の東直己の小説「ススキノ探偵」シリーズを原作とした「探偵はBARにいる」は2011年9月に公開され、その1週間後に続編の製作が決まった。スタッフ、キャストには当然、第1作を超えるという意欲と使命がもたらされる。当然、大泉も同じ気持ちで、楽しみに待っていた脚本の第一印象は「盛りだくさん」だった。

「アクションも派手だし、笑えるところもグッと増えている。そして最後にはストンと泣けてしまう。娯楽性がグンと上がっていて、のっけから面白かったです」

その冒頭は、自身が演じる探偵がやくざに捕らわれ、大倉山ジャンプ場のスタート地点で縛られているシーン。結果、見事なジャンプで華麗な着地を見せる。OKシーンにいたるまでさまざまな段階を踏んだが、探偵の窮地が開幕を告げる代名詞となることには一抹の不安もある。

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「この脚本はプロデューサーが最初にたたき台となるものを書き、古沢(良太)さんがディテールを描いて伏線なども面白くなっていく。そして最後にロケハンをしてきたアクション・コーディネーターによってアクションがズドンと足されるんです。初稿の段階では、探偵は逆さまにつられていましたから、自分がやるかと思うと笑っちゃいました。でもこの映画が、最初に探偵がやられているという縛りになって、そこを楽しみにされるとシリーズを増すごとに厳しくなっていくわけですから、今後を考えると気持ちが弱冠くじけていくというか…(苦笑)」

しかも、いったんはジャンプするカットがなくなったにも関わらず、撮影では自ら橋本一監督に進言して“復活”させてしまったというから面白い。

「自分の首を絞めるんだけれど、『跳んだ方が面白いんじゃない?』って言ってしまう。すると監督が『いいんですか? そう言っていただけるとありがたいです』となるんです。まあ、つらいと分かっていてもやるしかないのが役者の性ですよねえ」

さらに大きな見せ場となる札幌市内を走る市電の中での、探偵&高田と武闘派集団との大乱闘シーンの撮影は、1日目は営業中の時間帯、2日目は深夜に道路を封鎖して行われた。だが、2日目に思わぬハプニングが起きる。

「夜の12時から朝5時まで、何百メートルも完璧に封鎖したんですけれど、どうやら看板に『探偵はBARにいる2』の撮影のため封鎖します、と書いてあったらしくて、ものすごいギャラリーが集まってしまったんです。そう書いたら来るだろうなとは思いつつ、夜中の12時に沿道にものすごい数の人が集まっていたのが印象的でした」

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アクションに限ったことではないが、常にファンの期待に応えたい、より面白いものを見せたいという本能が、普段以上の力を発揮させる。それが結果、自身の達成感や糧へとつながっていくというのが役者としての“大泉理論”である。

「アクションは、やればやるだけ映画が面白くなると感じているので、痛いし怖いし大変ですけれど、でき上がりを見るのがすごく楽しみ。絶対に大変だと分かっていても、それがいいと思ったらやっちゃうし、カメラが回るとできるんです。演技に集中すると体のリミッターが1回取れるんだと思うんですよね。自分の限界以上のことをしちゃうから、カットがかかった瞬間、ものすごくダメージがあるんですよ。役者って皆そうなんじゃないかと思いますね」

そんな探偵をあらゆる場面で(結果的に!?)救う良きパートナーは、もちろん高田。その関係も深化しており、高田のセリフやト書きは前作以上に少なかったものの盤石の信頼関係によってアドリブも含めたやり取りを十分に楽しんだと強調する。

「松田くんが彼なりに考えたセリフや行動がより面白くなっている。松田くんもより自由に、何かをしても僕が必ず応えるだろうという信頼があるし、僕も彼がやってくることは間違いなく高田らしくて面白いし、僕がどうやって受ければいいかはドキドキするけれど、僕らもスタッフも皆が楽しみにしていた現場だった気がします」

そして、シリーズものの出来を左右する大きな要因として、新たに加わるキャラクターがある。大泉が楽しみにしていたのは、第1作の小雪に相当するヒロインの存在。探偵の依頼者となるバイオリニストの弓子役にキャスティングされた尾野真千子とは何度か共演したことがあるが、その成長ぶりに驚くとともに魅せられたようだ。

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「(NHK朝のテレビ小説)『カーネーション』の、関西弁でまくし立てるようなイメージだけれど、バイオリンを持つと本当に美しくて。1カットの中で完璧にバイオリンを弾きながら涙を流すシーンは、本当に難しかったと思います。1回ではうまくできなくて何テイクもやるんだけれど、役者として見ていたら逃げ出したくなるというか、もうやめてあげてって感じでした。でもそこは監督も譲らないし、真千子ちゃんも最後には演じきるところがすごいなと。役者として素晴らしいし、魅力的なヒロインでした」

加えて「ガレッジセール」のゴリが演じた、殺人事件の被害者となるショーパブのホステス・マサコちゃんも重要なカギを握るキャラクターだ。回想シーンでの出演が多く探偵との絡みは少ないが、かねて仲間だったという設定のため大泉もかなり気持ちを込めて撮影に臨んだという。

「探偵とマサコちゃんや仲間とのきずながきちんと見えないとダメだと思っていました。ゴリさんが決まった時に、素晴らしいキャスティングだと思いましたし、短いながらもゴリさんとのシーンはすごく大事に演じました」

そしてやはり、芸能活動の拠点と公言する北海道が舞台ということが相当大きなウエートを占めていたと断言する。

「どうしても北海道の利益になることをしたいと、頑張ってしまう気持ちがあるんです。北海道がよく見えてほしいし、映画やドラマを見た人たちが現場に行ってみたい気持ちになって、観光に来てくれればうれしいですしね。ただ北海道が舞台になると、もちろんうれしいけれど、プレッシャーもあります。コケるわけにはいかないっていう思いが強いです」

歓喜と重圧のはざ間に立ちつつも、「探偵はBARにいる2」はハードボイルドに笑いをちりばめた文句なしの娯楽作品として成立した。大泉が前作で提言した“乱暴なエロス”も格段にパワーアップしているが、本人に言わせれば「12歳以下でも親と一緒であれば見てもいいというPG12の判断が出たことでも、大変明るいベッドシーンであることが分かる」そうだ。気の早い話ではあるがさらなるシリーズの進化、継続に期待したい。

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