「「ニンともカンとも」な出来です」ガッチャマン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
「ニンともカンとも」な出来です
ネタバレというか酷評に近いので、
気に入ってる方はテキトーに読み飛ばしてくださいな。
ここのところ日本のマンガ実写映画化には良い流れが
来てた気がするんすけどねえ。
本作は今年僕が観た映画の中でもワースト作品の筆頭候補かな。
原作についてはキャラクターをTV特番か何かで観たことが
ある程度であまり知らない。
僕が観たかったのは邦画最大規模の派手なSFアクション。
物語に重厚さやユーモアがあればなお良い。
つまりはエンタメ大作が観たかった訳です。
そういう意味で言えば、本作のアクション自体は決して
悪くない。特に格闘アクションについてはそこそこだし、
(むしろ日本のスタントアクションのレベルって結構高いと思う)
さすがにハリウッドと比較するのは酷にせよ、CGのレベルも
邦画としては高い方。
けどね、
冒頭であんなCG満載のアクションを持ってくるのはムチャだ。
キャラ説明も十分に出来ていない状態でそれをやるならCGや
アクション演出自体にかなりのクオリティが無いと厳しいと思う。
基本的には画だけで観客を惹き付けなければならないのだから。
格闘アクションはまだ良しとしても、CGは苦しい。
デカイ車輪みたいな兵器がビルに激突するシーンの重量感の無さ。
空を飛びながら爆風を華麗に避ける主人公達の偽物臭さ。
始まってすぐの時点で気持ちが醒めてしまった。
そもそもこの映画、アクションを楽しむ云々の前に、
ストーリーとキャラにツッコミ所や陳腐な所が多過ぎる。
まずね、17日間で世界の半分を征服した連中が、
なんで残りを征服するのに10年以上も掛かるのさ。
そんなご時世の割に日本が平和過ぎて見えるのも違和感バリバリ。
そもそも唯一対抗できるガッチャマンが日本に実働配備されたのは
今回初めてらしいが、それじゃあ今までどうやって無事でいたのか。
なんか特殊な防衛策でもあるのかと思いきや、
銃弾が通用しない事がとっくの昔に割れてる敵を相手に、
日本の防衛部隊が使うのは実弾兵器ばっかりだし。
敵に有効と思われるバリアは造っといて、なんでそこは
進歩しとらんのよ。防衛部隊の人たち無駄死にじゃん。
ガッチャマンにしても、ザコ敵よりもビル破壊しながら
司令本部に向かう巨大兵器の方を先に止めるべきでしょ。
ジョーも勿体ぶってないで最初から戦いなさい!
ギャラクター幹部の風貌もどうよ。何だねあのゴスロリ娘は。
敵も味方も何やっておりますのん。
あと光石研さんの役。演技の良し悪しを言う以前に
カークランドて。その顔でカークランドて。
はい、長々とツッコミを入れさせていただいたが、
ここまでが冒頭20分までのツッコミ所である。
正直、本編の半分も終わらない内に興味を無くしてしまった。
あと3倍ツッコミを入れたいが、長くなるし疲れるのでやめる。
最後にひとつだけツッコむなら、
東京壊滅まであと6分という時に冗談や美徳を語って時間を消費
するのはやめてほしい。せめて移動しながらにして。
まあ煎じ詰めれば、その後もアクションシーンの合間に
笑えないユーモアと取って付けたような深刻な議論が続く。
ケンとジョーとナオミを巡る因縁についても、
自分達はただの殺人兵器で自由が無いという葛藤についても、
描写が薄っぺら過ぎて話に深みが出るどころか
単にウジウジとした面倒臭い話としか感じなかった。
多少話のつじつまが合わないくらいであれば擁護もするが、
キャラやテーマまで薄っぺらにしか描かない映画を褒める気は起きない。
有名な若手俳優が沢山出ているが、演出がこんな具合なので
上手いか下手かを論ずる以前の問題って気がします。
まあけど、出演陣のファンでも無ければ、
この映画を最後まで楽しんで観るのは難しいかも。
〈2013.08.24鑑賞〉
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追記:
最後にひとつツッコミを。
6分で海上から宇宙の衛星にまで到達する要塞の速度について。
一般に、衛星は低いもので上空約500㎞に浮かんでいるそうな
(ありがとうWikipedia)。地表から6分でそこまで行く場合、
単純に割り算すると最短でもマッハ4以上つまり秒速約1.4㎞
(爆)で飛ばねばいけない計算になる。
……いくらヒーローでも立っていられるんだろうか?
教えて、柳田理科雄先生。