劇場公開日 2013年1月11日

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「前作以上のスケール、激しさ、独創性に加えて、父の愛はどさらに愚かで笑えました(^^ゞ」96時間 リベンジ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前作以上のスケール、激しさ、独創性に加えて、父の愛はどさらに愚かで笑えました(^^ゞ

2012年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 まず試写会のゲストとして登場した、井筒和幸監督とラッパーのライムスター宇多丸のブチ切れトークが凄く面白かったです。
 アクションが似ていて、手先でさばくシーンが多いことから、宇多丸が「リーアム・ニーソンの皮をかぶったスティーブン・セガール映画」と喝破すると、井筒監督も脱線して執拗に『007 スカイフォール』の批判を語りまくります。
 例えば、本作が上映時間は92分の受けて、宇多丸が「シンプルなプロットがいい。これくらいの時間で楽しめる映画をどんどん作ってほしい」と注文すると、井筒監督は「『007 スカイフォール』は長かったしな」と同調。クライムアクションは、結末が見えているだけに、さくっと短いのがいいと持論を力説。宇多丸は「『96時間』をほめるのに、わざわざ他の映画をけなすのはどうかと思いますけどね…」と苦笑いし、司会者は話を『96時間』に戻すのに必死でした。
 それでも井筒監督は、『スカイフォール』はお色気がないなど、重ねて攻撃。でも自分も『スカイフォール』に対して感じていた疑問点を指摘してくれたので、共感はできました。

 試写会は、前作の上映もあるサービスぶり。2作品のプレスキットも貰えて、大満足の試写会となりました。

 さて、前作ではアルバニアの悪党どもをバッタバッタと倒していったブライアンでしたが、家族意識の強うアルバニア人は憤り、復讐を仕掛けてくるというのが、本作の基本線。前作も見なくてもそれなりに楽しめるけれど、ブライアンの娘に対する強い思い入れについては、前作を見ていたほうがより感情移入できると思います。

 アクションもさることながら、本シリーズのウリは、情けないほどの親バカぶり。今回は前作以上に、愚かしいほどの娘であるキムに対する溺愛ぶりが発揮されていて、多いに笑えました。
 キムも2年経ってすっかり年頃の娘に成長しました。当然彼氏もできて、ラブラブになっていたのでした。でも、心配なのは父親の存在。何しろ一発で、彼氏の身辺調査をしてしまう元CIAエージェントなので、母親の元妻レノーアにも箝口令をしていたのにもかかわらず、ちょっとしたヒントで、彼氏の居所を突き止めて勝手に会いに行ってしまうのですね。娘に彼氏ができたことを知ったとき、肩をガックリ落として狼狽するブライアンのシーンが見物です。ラストにも彼氏がお呼びでないのに登場して、またまた狼狽。二度笑えました。父親なら凄く共感できるシーンでしょう。

 全編を通して特徴的なのは、前作に比べてリュック・ベッソン+ヨーロッパ・コープ作品らしさが前面に出てきたことです。前作では、製作のみの参加でユナイテッド映画のクレジットだったのが、本作ではヨーロッパ・コープのクレジットも加わっていました。
 ヨーロッパ・コープ作品の特徴は、接近戦の激しいアクションとポップな音楽にあります。それとアクションシーンに屋根伝いのパルクール風アクションが描かれることも。そんならしさが随所に目立つ出来映えでした。

 本作ではファイト・コーディネイターに、アラン・フィグラースを招聘。『ボーン・アイデンティ』を特徴付けた接近戦のノウハウをさらにパワーアップ。より過激なアクションシーンを見せ付けてくれます。
 また前作でも印象的だったカーチェイスのシーンは、まだ免許も取っていないキムが運転して、追っ手を振り切るという趣向。世界中でも一番混雑しているイスタンブールの街中を、心許ない運転ぶりで疾走するところは、より恐怖心が煽られました。

 演出面でも、前作以上にドキドキ感がアップ。特にイスタンブール旅行をのんびり楽しむブライアン一家に、刻一刻とアルバニア人の魔の手が近づくところは、緊張と旅を楽しむ一家の無防備ぶりが対比されて、余計に緊迫感を感じさせる演出だったのです。
 また、今回はブライアンとレノーアが捕まり、キムが救出に向かうという前回とは立場が逆転している設定も面白いところ。何しろ全くの素人であるキムがどうやって、救出するのかという一連のシークエンスをうまく辻褄を合わせているところがいいのです。
 ポイントは、非常用の携帯電話をブライアンが隠し持っていたこと。これでキムに連絡を取り誘導。脱出に必要な手榴弾と拳銃を手に入れたのでした。ここで特筆すべきことは、キムを誘導する方法です。ブライアンは、自分が拉致されたとき、目隠しされた状態からも、捕まったホテルから換金先のアジトまでの経路を、要所要所の所用秒数を記憶。車の進行方向や速度、周囲の物音をくまなくチェックしていて、自分がどこに連れて行かれるのか克明にキムに伝えることができたのでした。この辺の細やかな演出が、卓越した特殊スキルを持つブライアンを一層印象づけてくれたのです。

 ラストはグイグイとアルバニア人の家長ムラドを追い詰めていくブライアン。降りかかる火の粉は振り払わなければならないが、いくら倒してもそれが因縁になり、また復讐の刃が自分と家族に向けられるはこりごりというのが正直な気持ちでした。
 ムラドに迫るラストアンサーの決めゼリフがブライアンの気持ちがこもっていて渋かったです。
 でも、結局続編に繋がりそうな因縁の残る展開なのが気になるところです(^^ゞ

 今回の舞台はイスタンブール。東洋と西洋が出会う街のエキゾチックな魅力も充分撮り込まれています。この街ではどの方向を見てもランドマークが飛び込んできます。特に巨大な円形の建物であるスレイマニエ・モスクが印象的で、本作でも場面の切り替えごとにモスクが遠望されています。
 また、イスタンブール市街ではゲリラ撮影を決行。バザールの雑踏のなかでブライアンとアルバニア人一味の追いつ追われつの緊迫感あるシーンを撮影。臨場感たっぷりで、特に屋根伝いのパルクール風にブライアンが屋根伝いに逃走するところがなかなか迫力が出てました。

 最後に元々はアクション俳優でなかったニールソンでしたが、『特攻野郎Aチーム』でプロの特殊部隊経験者にアクション指導してもらってから開眼。単なるアクション俳優と比べて違って演技派の俳優だけに、強烈な父子愛を見せ付ける本シリーズにはうってつけであると思います。二作続けてみるといかにブライアンが家族を大切に思っているのか、強烈に印象づけられます。
 今回は、再婚した元妻が再婚の相手と不仲になったところで、ブライアンに助けられるという流れ。次作はせひよりを戻して、家族水入らずの光景を見たいものです(*^_^*)にこにこ♪

流山の小地蔵