「いい映画です。だけど…」はじまりのみち ちゃとらさんの映画レビュー(感想・評価)
いい映画です。だけど…
木下監督の母が自分のおにぎりを便利屋と木下監督に分け与え、それを木下監督がしっかり食べる場面とか、母と息子ってこうなんだなぁと泣かせる。映画、「陸軍」の場面の母は、よく言われる、女々しくはなかった。むしろ母も戦っている印象がある。出征する子供の武運長久を祈る気持ちもあるだろうし、無事で居て欲しい気もあるだろう。しかし、それを越えての母の愛は力強く凛々しい。私はむしろ血湧き肉躍りぞくぞくした。この陸軍がこの映画の主題だとしたら、私達にぞくぞくする感動を与えて欲しかった。映画を作る上でいろいろ制約もあっただろうが、それは演出とか音楽でもう少し何とかなったのでは無いか?それよりもこの監督は主題に母の愛の力強さという物が考えつかなかったのではないか?また、エンディングの映画紹介場面では、野菊の墓の映画では主人公とたみさんの分かれのシーンがチョイスされていたが、ここは、たみさんが泣く泣く好きでも無い人と結婚するときに、キッと覚悟を決めて上を向くシーンがあるのだが、その女性の凛々しさこそがこの映画の一番素晴らしいところだった。その場面こそチョイスして欲しかった。この映画は女性の凛々しさ、母の強さを考えに入れてなかったため、薄い印象の映画になってしまった。こんなこと言っては失礼は重々承知しているが、山田洋次監督だったらもっと、人間くさく、恥ずかしく、醜く、笑わせて泣かせてくれただろうなぁと思う。いい映画には違いないので見て良かった。
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