劇場公開日 2013年6月1日

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「どこまでも清々しく、まっすぐに」はじまりのみち cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どこまでも清々しく、まっすぐに

2013年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

どこまでも清々しく、心に染みる。そんな作品に、久しぶりに出会った。遠州ことばが心地よく、海の青さと砂の白さがまぶしい。静岡へ、太平洋を見に行きたくなった。
シンプルでオーソドックス。澄み渡るように美しい物語の余韻に浸るうち、この作品の緻密さ、濃やかさに改めて感じ入る。病床の母をリヤカーに乗せ、黙々と50キロの山道を行く。波乱万丈とは程遠い、地味で辛い行路だ。しかし、そこで彼が見聞きしたあれこれは、全て「その後」の伏線であり、クライマックスで見事に骨太な物語へ収れんされていく。まさに、この旅が「はじまり」であったと分かるのだ。
とはいえ、本作は、木下惠介監督とその作品群をめぐる謎解きや知的ゲームではない。母子の情に浸るもよし、人生の岐路に立った若者の成長と再生を見守るもよし、映画史の一コマを生き生きと知るもよし。観る者をしばらず、懐深く、おおらかに味わい方をゆだねてくれる。
俳優陣のアンサンブルも素晴らしい。主役の2人は言うまでもなく、控えめだが存在感のある父•斉木しげるや、弟と外界をつなぐ兄•ユースケ•サンタマリアもなくてはならない役どころだ。そして何より、便利屋•濱田岳! 小柄な身体を生かしたコミカルな役を重ねるうち、いつの間にか彼は唯一無二の役者さんになっていた。彼あっての本作、と言いたい。「破れ太鼓」が観たくなった。

cma