「これだから、「アニメ屋」は…」はじまりのみち トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)
これだから、「アニメ屋」は…
6月某日、錦糸町楽天地で鑑賞。
劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズでアニメ界というより、日本映画界に金字塔を打ち立てた原監督の、初の実写映画。
筆者は、原監督のクレしんは大好きだったし、すばらしい作品を残した、と思っている。その監督の初の実写だから、それなりに期待したが…。
木下作品への尊敬、敬愛の念は筆者も十分に持った映画ファンではある。
本作も、原監督の木下恵介への尊敬と、作品への愛情にあふれていて好感が持てる。
主演の加瀬、母親役の田中もいい味を出している。予想以上によかったのが兄役のユースケ。
浜田岳もこれくらいはできて当然だが、いい役をもらった、と思った。最後までいい気持ちで見られた作品である。
だが、しかし!
本作は味わい深い、いい映画だ、と評価したいし、木下作品などほとんど見たことのない若い映画ファンに関心を持ってもらうためにも、「見てもらいたい」映画だ、と薦めたい。
しかし、あのクレしんで発揮した、原監督の才気煥発の演出力というか、表現力が影を潜めているのはどうしたことか。
もちろん、テーマがテーマなんだから、クレしんのような作品に仕立てられるわけはないのわかる。
それでも、作品のかなりの部分を木下監督のオリジナル作の名シーンをちりばめるのに終わっているのはどうしたことか。
こんなのなら、NHKスペシャルあたりでやってくれればいい話だ。
これを劇場作品として捕らえるなら、やはり点数は激辛にしておく。
監督は撮りたい作品を撮ればいい、というものではない。
千数百円払ったことに満足できる作品を撮らなければいけないのだ。
たまたま、訪れた楽天地。原ちゃんの舞台あいさつもあった。
悪いけど、そのしゃべりにも魅力はなかった。
「パンフレットご購入で監督のサインが…」と劇場スタッフは声をかけていたが、僕はその足で、同じビルで上映している「クロユリ団地」を見に急いだのだった。