「シャマランの「サイン」が根底に流れる不思議な魅力を持ったコメディ」ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
シャマランの「サイン」が根底に流れる不思議な魅力を持ったコメディ
とても残念な邦題で本作が大好きな私は非常に胸が痛いし、もっと残念なことに主人公がニートであることに変わりはないのだが、しかし早く就職して独り立ちしなさい、という映画ではない。マーク・デュプラスが兄ジェイと共に監督・脚本を務めた本作は、なぜかその根底にシャマランの『サイン』の「すべての業に理由がある」というテーマを敷いて、それをコメディという驚きの角度で噴射させる。ジェイソン・シーゲルとエド・ヘルムズの兄弟役はもしかするとデュプラス兄弟のリアルな関係性の投影なのだろうか。そこに母親役のスーザン・サランドンが降臨し、演技の妙と世代の幅と格調の高さを加え、さらに母子それぞれの目線で日常を綴る群像劇としても機能し始める。それがラストで一つに繋がる時、ほんの些細なことではあるけれど、我々は「すべての業に理由がある」ことを噛みしめる。派手さはないが、運命のまま、導かれるままに、つい惹き込まれる秀作だ。
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