「いい意味で予想を裏切られた」劇場版 TIGER & BUNNY The Rising ascwさんの映画レビュー(感想・評価)
いい意味で予想を裏切られた
TVシリーズを視聴済みです。
前作のBeginningは観ていませんが、おおよそはTVシリーズで把握できているのと、Rising本編の前にちょっとしたダイジェストが流れてストーリーの説明もあったので問題なく楽しむことができました。
TVシリーズぶりだったので久々のタイバニでしたが、OPと主題歌が流れ、ヒーローたちが動きまわる姿を見た瞬間に懐かしさがこみあげてきて、じーんとなりました。桂先生描きおろしの絵とNOVELSの新曲で、またタイバニの世界を楽しめるのだという実感がわいてきました。
今回はバーナビーが虎徹とのバディを解消させられ、新たな相棒ライアンとタッグを組むところから始まる話です。
このライアンが予告編ではまるで悪人のように見えるのですが、いい感じにブレず、俺様で、信念を貫いている好感の持てるキャラだったことが驚きでした。バーナビーとのコンビは虎徹と負けず劣らず凸凹で、彼らのやり取りに思わず笑ってしまうことも多く、いいコンビだなと感じました。
また意外なところではネイサンの過去が掘り下げられていて、ちょっとうるっとしてしまいました。ネイサンのアイデンティティ上の葛藤を、仲間のピンチと組み合わせて、うまく見せ場が作られています。
他のヒーローたちも見せ場たっぷりでしたが、特にライアン、ネイサンの株が大幅に上がった作品でした。
しかしなんと言っても一番株を上げたのはバーナビーでしょう。
「老いと限界」を感じていく主人公という新鮮さ、凸凹コンビがお互いを認め合い共闘するという王道ぶり。その両方がタイバニの面白いところだと思っています。
TVシリーズ当初、自身の目的が第一だったバーナビーは虎徹と出会って人への信頼を思い出し、ヒーロー稼業への思いを改めたりと、そうした変化を経て成長していきました。
ところが終盤における、虎徹がヒーローを辞めたら自分も辞める、彼が復帰したら自分も復帰する、という流れには、結局バーナビーは虎徹に依存したままじゃないか、という思いをぬぐいきれませんでした。個人的にTVシリーズで納得いかなかった点というか、モヤモヤしていた部分です。
そういった訳で、今回の劇場版で最も注目していたのは、虎徹と離れたバーナビーがどのように描かれるかということでした。
しかしRisingを観てみると、なんだかんだ言って虎徹がいない状況でもうまく仲間と連携していくバーナビーの姿があり、彼の成長がうかがえました。
虎徹が傍にいないからこそ、「虎徹と出会ったことにより成長したバーナビー」を実感できた気がします。
劇場予告編でバーナビーが「僕が救いたいのは、あなたです」と言っていたシーン、てっきり虎徹に向けて言っているのかと思いこんでいましたが、そうではなかった。
虎徹との出会いが大きければ大きいほど、ヒーローとして人間としても、虎徹から独立して在ってほしい。そう思っていたので、このシーンはバーナビーが輝いて見えた瞬間でした。また、虎徹の存在や、彼とコンビを組んでいた日々が改めて尊く感じられもしました。
成長したバーナビーと、やはり人を救いたいという気持ちを捨てきれない虎徹が再びタッグを組んで敵を倒すシーンは胸が熱くなりました。
全体的な展開はご都合なところもありますが、戦闘シーンでは敵と激しくぶつかりあうヒーローたちの勇姿が見られたし、TVシリーズでモヤモヤしていた部分が消えたので、大満足です。
UNISON SQUARE GARDENのED曲もとても良かった。