隠し砦の三悪人のレビュー・感想・評価
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黒澤映画の冒険活劇の最右翼
黒澤映画全作クリアを目指した時期があり、その中であまり名作として位置付けられておらず後回しにした作品ですが、実際観たら娯楽性(いまならエンタメ性)高く楽しめました。
いまやスターウォーズ製作時に影響を受けたというのは定説です。私は微妙にこちらを先に見てました。
スターウォーズの第一作は公開時に観たが、この黒澤作品はその1、2年前に見た。スターウォーズを観ている最中になんか似てるぞと思って最後に確信に変わった。
よくできた作品でご都合主義は黒澤の娯楽作品では当たり前なので気にならない。アメリカ映画はかなり影響を受けてます。アラはありますが、映像のダイナミズムは黒澤さん特有です。
一番の見どころは姫の後ろ姿。セリフは下手ですが、旅籠屋での輝くシーンとかラストの優美な姿が映える。
俳優は結局セリフは下手でもいいと思います。三船もセリフは下手です。存在感が全てです。
こんな映画はなかなかできない。
黒澤流エンターテイメント
1958年の作品です 昔一度見たことがありますがその時はイマイチでしたが 最近黒澤作品を見続けているので勢いで久々見たら 面白かったです 2時間を超える超大作です 冒頭の百姓2人がケンカしながら山道のようなところを歩くのを後ろからとらえるシーンはスターウォーズ ジェタイの復讐のオープニングと同じ ラストの百姓2人に恩賞を与えるシーンはスターウォーズ第一作のラストのレーア姫のシーンと良く似ていますルーカスはこの作品がお気に入りです 砦を出発したあたりからだんだん面白くなります アクションシーンもけっこうあり 音楽もいいです 騎馬武者が登場するシーンがけっこうあってやはりカッコイイですね この時代にこれだけのエンターテイメント しかも今の映画でこのフィーリングは無いでしょうし 黒澤作品独特の演出がありますね
失われた日本に捧げられた神話
『隠し砦の三悪人』は「見せる」と「語る」黒澤明のうち、彼の作った30作品の中でもっとも「見せる」に重点を置いた作品である。
「理性」に訴えかけてくるその他の作品と異なり、この作品だけが唯一「感情」にも訴えかけてくる点が特異である。
しかしあえてここで、この作品で何を黒澤が語りたかったかということに着目してレビューを書いていきたい。
この映画の雛形となっている『虎の尾を踏む男達』が戦前の神話だとしたら、『隠し砦の三悪人』は戦後の神話である。
『虎の尾を踏む男達』では「忠誠心」というものが全面に出ていたが、本作では「選択と責任」が軸になっている。
雪姫は単なる姫様ではない。戦後の象徴天皇と重なる存在であり、政治権力を持たず、しかし文化的精神的な「高貴さ」「在ることそのもの」の象徴、国を背負う存在として描かれている。
つまり、彼女は日本神話の延長線上にある国体の擬人化である。
秋月家の滅亡と新たな共同体の再編成、旧来の力の崩壊と、新たな秩序・文化の再生。
これは、敗戦による国家の崩壊と戦後日本の再出発を寓話的に表現している。
喪失→放浪→再生という弁証法的展開は、古典的神話のパターンに則っている。
黒澤は無意識のうちに、戦後日本に必要な神話の骨格を再編成していたのである。
ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』でアメリカ建国神話の再構築を試みたのと同様、黒澤もまた『隠し砦の三悪人』で日本文化の神話的再設計を志向していた。
つまり、両者は国民的アイデンティティのリセットを映画によって試みたのだ。
損得勘定に生きる農民、又七と太平は、敗戦後の庶民像を代弁している。
二人は理想でも忠義でもなく、生存と打算の中で右往左往するが、最終的には理性のある共同体に再統合される。
これは日本社会の「国民統合」プロセスそのものを寓話化している。
黒澤がどこまで自覚的に「神話再編成」を意識していたかは不明だが、作品全体に「秩序と無秩序のはざまを揺れ動く人物たちの姿」が描かれている。
それ自体が戦後日本の再統合できていない不安定な状態を表し、無意識の時代精神が投影されている。
『隠し砦の三悪人』は日本人が求めていた敗戦後の日本の進むべき道、在り方を揺るがずに提示した作品ではないだろうか。
娯楽性と寓話性を両立させた黒澤明の特殊な知の成果である本作は、現在の価値判断能力を失い、先が見えなくなっている日本人にこそ見てほしい。
4K UHD Blu-rayで鑑賞
95点
三悪人とは果たして
又七と太平の口ゲンカで幕を開け、同じく二人が仲良くトボトボ家路に就く姿で終わる。この映画の主人公は真壁六郎太ではなく、まるでこの二人のようだ。
明治生まれの藤原釜足が大正生まれの三船敏郎を劇中では「兄貴」と呼ぶ。千秋実も三船より年上だが、そう呼ぶ。映画の中でも二人のほうがもちろん年上に見える。
しかし強い者がやっぱり“兄貴”なのだ。それは戦国の世だけではなく、いまでも変わらない。お調子者は実力者に胡麻を擂り、媚を売り、保身を図る。弱い者はそうやって生き延びてゆく。
しかもこの二人は、自分の都合でお互い手を組んだり陥れたりしようとする。腹の中では何を考えているかわかったものではない。黄金を見たら欲が沸き、もっと、もっとと手に入れたがる。こうやって人は投資詐欺に引っ掛かっていく。まったく今と変わらない。監督は四百年前の現代を描いている。いや、映画自体が七十年近く前のものだ。まことにもって恐れ入る次第だ。
一方で、忠義に徹する六郎太がいる。気高い矜持の姫がいる。男の友情に生きる田所兵衛がいる。下女も姫を守ろうとする。
対照的な人物配置と緊迫した脱出ストーリーで、巧みに長丁場を持たせようとする。この映画はロードムービーに分類されるという。
捕虜たちが大脱走を試みる一大スペクタルシーン。火祭りで踊るシーンも圧巻だ。六郎太が馬上で二人も敵兵を斬り落とす有名なシーンは何度観てもわくわくする。又七と太平のコンビネーションは後に『スターウォーズ』でロボットコンビとして世界に進出することにもなる……。
文字通り日本を代表する痛快時代劇だ。
キャラクター設定が素晴らしく、スターウォーズに影響を与えたのも納得
映画の冒頭は、太平と又七のコンビの後ろ姿から始まる。ラストシーンもこの二人。この二人の他、雪姫も重要なキャラクターで、三船演じる六郎太だけが目立つ映画ではないところが魅力。太平と又七のキャラクター設定がよくできていて、観ていて身近な話に感じる効果がある。仲が良いようだけど喧嘩もよくするという、腐れ縁のような関係は、R2D2とC3POのモデルになったというのも納得できる。美しいだけでなく、気の強い雪姫のキャラクターもこの映画の質の高さを印象づける効果があり、ぴったりとはまっている。
殺陣もこの映画の魅力。六郎太と田所兵衛との殺陣は、刀ではなく槍なので珍しい。大きく移動しながらの殺陣は緊迫感があって見どころのひとつだろう。馬に乗って逃げる相手を六郎太が馬で追いかける殺陣は、ハイレベルな騎乗技術とスピード感に驚く。このシーンもスターウォーズ/ジェダイの帰還のスピーダーバイクのチェイスシーンのモデルらしい。
ラスト近くで雪姫が「雪姫は楽しかった。この数日の楽しさは城では味わえぬ。人の美しさを、人の醜さをこの目でしかと見た」と話す場面がある。ここは、ローマの休日の「ローマです。なんと申しましても、ローマです。私が生きている限り、ここでの思い出を生涯大切にするでしょう」というセリフを連想した。ただ、年代はローマの休日が1953年、隠し砦が1958年で影響を受けた側になる。
この映画について、タイトルの「三悪人」とは、誰を指すのか、という議論があるが、やはり太平と又七の二人は「三悪人」に含むのではないかと思う。(すると、残る一人は当然、六郎太だろう)確かに、悪人と呼ぶには軽くて庶民的すぎるようにも思う。しかし、「金」を運ぶという“打ち首ものの役目”を必死に果たそうとしているのだから、そう呼んでも良いのではないか。
ラストが素晴らしい
一大冒険活劇にして、最高のエンターテイメントだ。
戦国時代。敗戦の侍大将が、負けん気の強い姫とお家復活の軍資金を伴い、道中で出会った2人の農民を伴って、敵中突破を目指す姿を描いた、冒険活劇。『スター・ウォーズ』に影響を与えたことでも知られる作品ですね。
大胆不敵で堂々たる侍大将と、勝ち気で負けん気が強い姫が、身分を隠したまま、2人の農民との道中を繰り広げるのだが、真剣なドラマとユーモラスなコメディを、絶妙なバランスで見せてくれる。
2人の農民は、決して賢いとは言えず、喧嘩ばかり繰り返すのだが、単なる狂言回しを遥かに超えた、とてもコミカルな存在で、愛すべきキャラクターだ。
1958年公開のクラシカルな映画の中でも、カラッとした雰囲気で、突き抜けた面白さがある。細やかさと大胆さを融合させ、アクションとコメディとドラマが混ざり合った、純粋に楽しめる一大エンターテイメントだ。
黒澤作品としては細部の詰めが甘い
気になるのは脚本の練り込みの粗さ。
特に太平と又七のコンビが一貫性のない性格で、こんにゃくのように態度が変わる。欲深い性格の故と、劇中では語られるが、狂言回しの役割なので、主人公たちの置かれた危機をうまく説明するために、彼らのセリフを当て込んでいるが、ついて来る必然性が薄い。200貫と言えば相当に重いはず。少人数で運べる量ではなく、どこかに隠して、逃げることを優先するのが定石だろう。
関所の通過を解りやすく説明するのも、観客に分からせるための方便で、真壁六郎太ほどの大将であれば、選択肢の一つとして頭にあったはず。太平と又七に気づかされた体裁だが、愛すべき凸凹コンビと強い侍の結団式を、粋なエピソードで見せているが、普通なら二人は逃げ出すだろう。
偶然の要素が重なり過ぎている。
それにしても祭りのシーンは素晴らしい。
三船と藤田進の槍の戦いも見事。練習から、本番まで、かなりの手間がかかっているはずだ。
最後の、獄中で姫が負け惜しみを吐くシーンも素晴らしい。処刑を待つ身でありながら「楽しかった!」と言って、歌を朗じ、それを見た兵衛は自分の主君とのあまりの器の違いに、心中穏やかでない。姫を守り切れなかった六郎太は悔しさで男泣き。このロングショットの長回し。画面に収まっている4人ともが、それぞれの胸中を態度で見せている。奇跡が起きたと言っていいだろう。
娯楽性に大きく舵を切って作られた映画で、展開の少なさの割には尺が長い。確かに面白い作品ではあるが、個人的には「用心棒」「椿三十郎」で、その娯楽性は結実した印象だ。
また、この前の年に「蜘蛛巣城」があるが、ここでもド迫力の矢撃ちのシーンがある。三船敏郎の演技は、文字通り命がけであったろう。
後年、人間の業を描くことで、黒澤の映画はより深みを増していく。個人的には「赤ひげ」ほど魂を揺さぶられた映画も少ないので、どれか一つと言われれば黒澤作品では「赤ひげ」が一番で、この映画は残念ながら好きな黒澤映画の中の一本に過ぎない。
謎の涙
可能なら、日本語字幕ONがおすすめ
「隠し砦の三悪人」1956(羅生門1950と七人の侍1954の後)...
「隠し砦の三悪人」1956(羅生門1950と七人の侍1954の後)
三船の主演アクションなので見にいく 今年シネヌーヴォ九条で見た羅生門に引き続き
あの時三船敏郎に衝撃うけて本まで買ったり満州や秋田出身戦争に従軍したことなど色々特攻くずれとか
・馬に乗ったまま槍で戦う 本当にできるの?怖い 命がけのアクションシーン多い
・歴史場面(城の行くまでの石の階段 祭りは農民の軍事訓練的な農民を集めて築城などする)
・黒澤明の好み 農民祭り面白い
・三船敏郎がもうスターの確固たる地位を築いた後の映画なのかも 役柄がすごく頼れる兄貴になっている 品格のある偉い侍大将の役はまってる
・後世に影響を与えた 砦の場面ゲームのFFのチョコボ思い出した
・ギャグはノリが古く感じられて痛快娯楽活劇という評価だが途中で寝てしまう 二人の百姓はすぐケンカ兄弟げんかのようだ凝りもせず
これはその当時の日本人のノリなのだろうか軽薄植木等とか無責任男は1962年
・お姫様のかっこよさ殿としての魅力的な感じでエンド 心地よく終わった
・コメディができる俳優って貴重だよねできる人とできない人がいるのなぜなのかみんなできないぐらい演技力いるのかしかし三船はできない派かも 百姓コンビが達者な人たちだったバカになりきってて安心して見れた
世界の黒澤面白い!
【時代劇の主役に名もなき農民を据えた作品。後世に及ぼした影響は多大なる作品である。】
■敗軍の将、真壁六郎太(三船敏郎が)、世継ぎの姫と、雪姫と隠されていた軍用金を抱えて敵陣中を突破しようとする。
次々襲い掛かる困難を危機一髪で潜り抜けていくシーンは、迫力たっぷりで爽快感満点である。
■戦国の乱世。山名家と一戦を交え、敗れ去った秋月家の侍大将・真壁六郎太は、世継ぎの雪姫と数名の残党と共に隠し砦にこもった。秋月家再興のため、同盟国である早川領への脱出を計画する。それには敵地を通って早川領へ抜けるほかに道はなく…。
◆感想
・今作の主役は名もなき太平(千秋実)と又七(藤原釜足)である。
ー 今までにない視点である。-
■驚くのは、今作の脚本のレベルの高さであり、三船敏郎の眼力は別格とて、雪姫を演じた上原美佐さんの、眼力及びその魅力であろう。
<今から50以上の前の作品にして、この面白さ。唸るばかりである。>
裏切り御免‼️
胸躍る時代劇!! こんな映画ほかにはない
痛快娯楽エンタテインメント!!!
この作品を元に、ジョージルーカスが「スターウォーズ」を制作したのは
有名だが、初期のスターウォーズを知らない世代の為に、あえて説明する。
この作品の、太平と又七の凸凹コンビをから、スターウォーズC3PO、
R2D2が作られた。 だがスター…の、ロボットで片や人間の言葉が喋れ、
片方は喋れないの掛け合いより、やはり普通の人間の会話の太平と又七
コンビの方が、パフォーマンスで上と見れる。
黒澤映画の痛快娯楽エンタテイメント作品は「七人の侍」が有名だが、
七人…は映画の密度が濃いので、黒澤映画初心者に痛快娯楽作品を
求める人には、この隠し砦…の方をオススメする。
このレビューが、満点が★5つしか無いが、満点が★8つであった場合、
私は満を持して、この作品に★8つを与える!! 日本はおろか、世界中
の映画の中で、★8つを付ける物は、そうそう幾つも無い!!!
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