劇場公開日 2013年9月13日

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「神のいない日本という土地だからこそ」許されざる者 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0神のいない日本という土地だからこそ

2020年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

荒涼として、救いのまるで見当たらない枯れた土地の哀しさと虚しさと一抹の儚さ美しさを、これでもかと表現できたのが、この映画の最大の功績でしょう。

旧幕府軍の一員として多くの敵を斬った男。
もしも勝ちいくさだったなら大英雄として祭られていたはずの人斬り十兵衛ですが、新政府軍の追手を逃れ、すべてを捨て、酒も絶ち、悔悟の念とともに、若くして逝去した妻の思いを抱きながら、忘れ形見の子供二人とともに荒れ地に命を埋める覚悟を固めています。

そこにかつての戦友が現れ、それでも天国にいる亡き妻への操を貫き続ける主人公ですが、ついに最後の最後に亡き妻との誓いを破って濁り酒を口にし、封印していた人斬りを復活させてしまうのです。

その哀しさ。

子供たちの元に戻るのが十兵衛ではなく、アイヌの青年と、顔を切られた不幸な少女であることも、十兵衛自身は子供たちの前からも姿を消してしまうということにも、許されざる者というタイトルの業の深さなど、考えさせられる映画でした。

善とは何か。悪とは何か。
神のいないこの日本という土地でこそ、タイトルの「許されざる者」という言葉の意味が、深く深く観る側に問われるのです。

お水汲み当番