「毎朝、決まってベーコンエッグを食べていると・・・」31年目の夫婦げんか Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
毎朝、決まってベーコンエッグを食べていると・・・
この映画は、メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズの競演ともなれば、自然と期待が高まってしまうので、もしも外れたらどうしようと、とても楽しみにしていたけれども、その半面ちょっと観るのが恐い作品でした。でも、そんな心配は全く無用でした。
この映画、ファーストシーンから、ドキっとさせられました。そして、その後は、熟年夫婦の、夫と妻の考え方や、気持ちのすれ違いのエピソードの数々が巧みに展開していきます。そして、こんな経験有る、有るとその一つ一つに頷いたり、冷や汗をかいたりで、思わず、笑みが自然と出てしまいます。
やはり、こう言う夫婦の微妙な気持ちをじっくりと魅せてくれるのは、アメリカ映画ならではの楽しみですね。絶対に邦画では、こう言う面白さが表現される事は無いだろうと思うのです。シャイで照れ屋の日本人には、特に最近は草食男子はやりですし、真正面からドンと夫婦の性生活を描ききってくれる映画には、出会わない。
それは日本の場合は特にどちらかと言えば、結婚後は、子供が出来ると、男と女の感情で、夫婦が成立していると言う考え方をするよりも、お父さんとお母さんの役割に徹してしまい、夫婦の愛の上に、家庭が揺ぎ無く存在すると言う感覚は、どうしても希薄になる。すれ違いが有るのが普通で有り、自然な姿なので、修復を試みる必要は余り無く、特に問題としなくても、全然OKだったりする。
こう言った男女の繊細な関係性には、触れないと言うのが、日本人の基本的な考え方なのかな?やはり、国民性の相違も有るのだろうが、こう言う倦怠期を迎えた夫婦の危機のドラマで楽しめたのは、本当に久し振りの事でした。
私は、今年は「きっとうまくいく」が最も面白い映画だと思っていましたが、この映画を観てしまったので、この作品が今では、一番今年観た映画の中では好きですね。
ところで、メリル・ストリープは「サッチャー」の後では、どんな役を演じる事になるのか正直心配でしたが、あのドラマティックなヒロインを演じた後が、この何処にでも生きていそうな倦怠期のオバサンの映画だったなんて信じられないけれども、それでいてこの作品では、ケイ役も抜群に巧く見せてくれている。きっと彼女の最高傑作の映画の一つになる事でしょう。
そしてまた、日本ではトミー・リー・ジョーンズもコーヒーのCMの印象が大分色濃くなってしまいましたが、彼の演技がこの作品でも光ります!
デビッド・フランケルと言えば、あの「プラダを着た悪魔」で、コワーイ悪魔をメリルに演じさせた監督ですし、彼女との仕事も息がぴったり合っているのが伝わってきます。
私は、この映画が余りにも面白い映画で、気に入ってしまったので、絶対に1人でも多くの映画ファンにこの作品を観て貰いたいので、敢えて映画の具体的な内容については今回触れませんでした。それは、是非貴方にこそ、映画館で観て欲しいからです!そして、エンドロールは最後まで、席を立たずにじっくりとご覧下さいね!