「役柄のプロ意識と、演技のプロ意識に感銘」藁の楯 わらのたて 長井 祥和さんの映画レビュー(感想・評価)
役柄のプロ意識と、演技のプロ意識に感銘
とにかく俳優陣の演技が素晴らしい。とくに主人公演ずる大沢た
かおさんは、プロ意識と個人的な思いの狭間で葛藤する様が見事
である。
護送する側の5人のそれぞれに抱えた職務への責任と、内に隠し
た事情を隠してのせめぎ合いは、不自然さを少しも感じさせない
し、護送される側の藤原竜也さんの、自分本位な犯罪者、くずっ
ぷり演技は見惚れるばかり。それ以外の脇役陣についても、役柄
に溶け込んでいて、演出について手抜きはない。
以前、東京国際映画祭に招待されてからというもの、日本映画を
見る機会が増えたが、テレビでは見られない演技力の確かさには
毎回驚かされる。
それまであまり日本映画を観てこなかったことに後悔するばかり
である。
ストーリーについては、原作は未読であり、そちらを読まない限
り、プロットに対する評価はアンフェアと思う。
ただ、原作では、もう少し護送する5人の側の背景が描かれてい
たのではないだろうか。映画化にあたっての尺の都合は理解する
ものの、もう少し背景が描かれていれば、と思う。
また、ラストの場面では場を盛り上げるためとはいえ、あれほど
の大舞台を作り上げるのはどう考えてもおかしい。それまで積み
上げてきた諸設定が台無しになってしまった気がする。せめて蜷
川が顕れるのが、賞金を取り消してからなら、説得力があったの
に・・・・惜しい。
でも、ラストの藤原さんのセリフは、あのセリフに本作の深みが
あると思うだけに、素晴らしい。
本作があの「ビー・バップ・ハイスクール」によって描かれてい
たことも驚いた。いつの間にか小説家としても活躍されていたと
は。本作を観て、原作も読んでみたいと思う。
最後に、、、メインスタッフの一人と以前、名刺交換をさせて頂
いたことに気づいた。おそらくはあの方のはず・・・びっくり。
2013/5/18 ワーナー・マイカルシネマ新百合ヶ丘