「私の中での、溝口映画ナンバーワン作品に…」祇園の姉妹(1936) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
私の中での、溝口映画ナンバーワン作品に…
溝口映画について、これまで
「雨月物語」「山椒大夫」「近松物語」
しか観ていなかったが、
このサイトでの皆さんのレビューから、
これら以前の作品の高評価を知り、
昨今、「西鶴一代女」を経て、
戦前の「残菊物語」、
そしてこの作品鑑賞に至った。
そんな中、1956年版を
溝口監督作品と間違えて先に観てしまい、
姉の娘が登場しない違いがあるものの、
基本的な展開は知ったままの鑑賞に。
テーマには不釣り合いに感じさせられる
冒頭の軽快な音楽には驚かされたが、
なるほど、これが皆さんが絶賛され、
キネマ旬報でもベストワンに選ばれた作品
かと納得の鑑賞となった。
そして、更に、私が鑑賞出来た溝口映画6作品
の中でもナンバー1の位置付けとなった。
また、どうしても先に観てしまった
1956年版と比べてしまうが、
比較するのもはばかれる程の
長回し等の撮影技術のレベルの差は元より、
登場人物のひとり一人の性格描写が
しっかりしていることによるテーマ性への
優劣は比較するまでもなかった。
姉は保守的で古風な性格、
初めて見る10代姿に驚かされる山田五十鈴
の妹は男を手玉にたくましく生きる、
ある意味、進歩的でジェンダー平等意識を
先取りしたような人間像だが、
共に芸妓の世界の束縛からは脱却出来ずに、
好まざるを得ない結末を迎える。
そのクリヤーな首尾一貫した演出が
見事に感じた。
今回、観ることが出来たのは69分の短縮版、
果たして95分のオリジナル版が
どんな作品だったのか、
確認の出来ない現在、
映画ファンとしては痛恨の極みに感じる
今回の鑑賞でもあった。
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