「煙いビジネスをオリバー・ストーンらしく疾走感溢れる映像に!欠点があっても、もう一度観たくなる映画(^^)」野蛮なやつら SAVAGES グランマムさんの映画レビュー(感想・評価)
煙いビジネスをオリバー・ストーンらしく疾走感溢れる映像に!欠点があっても、もう一度観たくなる映画(^^)
こんにちは。
グランマムの試写室情報です。
『野蛮なやつら』★★★★
久々にオリバー・ストーン監督らしい新作を観た思いです。『プラトーン』『サルバドル』『7月4日に生まれて』などの戦場心理ものや、『ウォール街』『JFK』『ニクソン』といった社会派監督としての評価が定着しています。
個人的な感触として、この監督には、”煙い””アシッド”な世界観が似合うと思っていました。事実、ドラッグ所持で逮捕されたことがあります。煙い人だった のでしょう^^;
なぜ、私が直感で、それを感じたかというと、『プラトーン』など、他の作品でも、”煙い””アシッド”的なシーンの演出が秀逸だったからです。どの監督にも 、”これを描かせたら上手い”分野がありますよね。
特に、失敗作との声が高い『ドアーズ』をこよなく愛する者としては(あぁ〜!ジム・モリスン!ジム・モリスン!愛してます(*^。^*))、米国ドラッグの 歴史的経緯、ミュージシャンとドラッグの関係などが分って、非常に楽しめました。
言っておきますが、私は”煙い女”ではありませんよ(笑)一度も経験ないですぅ^^;
本作は、評論家仲間から、”煙い、煙い”と聞かされ、ストーンの得意分野が観られると期待して出かけたところ、それを裏切らない嬉しい仕上がりになっていました!もう一度、観たい〜と思わせたほどです。
キャスティングもグラマラスの一語です。今、イチ推しするエゲレスイケメンのアーロン・ジョンソン!(ジョン・レノン役と『キック・アス』でご存知でしょう)と、 『バトルシップ』『ジョン・カーター』で注目されるテイラー・キッチュ。
脇を固めるのが、ジョン・トラボルタ、『トラフィック』ゲバラを演じた『チェ』のベニチオ・デル・トロ、『フリーダ』などのサルマ・ハエックという、オスカ ー・ノミニー・スター群ですから、何と贅沢なこと!
物語は、2人の男に愛されるオフェーリア(Oと呼ばれる)の独白から始まります。西海岸のセレブなビーチに豪邸を構えるベン(アーロン・ジョンソン)と、チ ョン(テイラー・キッチュ)は、大麻栽培ビジネスで莫大な収益をあげた若き大富豪。
傭兵として戦場を渡り歩いてきたチョンが、アフガニスタンから最上の種子を持ちかえり、それを植物学者のベンが最高級の大麻に生育。ベンの意向で医療用大麻 などに多く出荷し、”クリーン”なビッグビジネスに成長させました。
美しいカリフォルニアガールを共有する3人の生活は、豪勢で穏やかなセレブ生活そのものでしたが、メキシコの巨大麻薬カルテルが、強引にビジネスの提携を迫ったところか ら、危険な日々が始まります。
カルテルの女ボス(サルマ・ハエック)は、彼らに服従することを要求し、Oを拉致してしまいます。愛するOを人質に取られ、無理難題なビジネスを提案するボ スに、2人はOを奪還しようと反撃に出ます。
ボスの弱みを握るべく、かねてから通じていた麻薬取締官(トラボルタ)から情報を得ます。IT部門(?)も抱える2人は、頭脳作戦により、女ボスの部下が裏 切っている証拠をでっち上げ、ボスの腹心(デル・トロ)に渡します。
騙したり騙されたり、ハラハラドキドキの奪還劇が続きます。
Oに対する暴力場面をネットにアップしたり、メールに添付。24時間監視システムなどの現代的要素も、ふんだんに盛り込まれていました。
本作で際立つのは、アシッド的な面もよりも、暴力描写でした。
ハエック、デル・トロとも、容赦ない冷酷極まる残虐さで、敵・味方なく殺戮を繰り返します。
銃による解決法は好まない私ですが、本作には、それでも何か透明なイメージ、ピュアな世界観を感じたのです。
Oを演じるブレイク・ライブリー(『ゴシップ・ガールズ』)をはじめ、主要3人の醸し出す清潔感も影響しているでしょうか。
麻薬ビジネスに関わる人間の闇黒さ、エグさが、登場人物たちから感じられないのです。
カリフォルニアのキラキラした陽光、目的に向かってぶれない主人公たちの姿勢から受ける印象もあるでしょうか。
“煙い”という評判も、むしろ肩すかしでした。あまり沈澱しない、爽やかさすら感じさせるドラッグ描写。ストーンは、大麻をクリーンなものとして、描き出したような気がします。
米国でベストセラーとなった原作は、当初から作者が映画化を視野に書き出し、本作の脚本も書いています。
原作とは異なるという結末も、エンディングイメージの豊かな作者による、米国らしい終焉です。
ストーン特有のグラグラ揺れるカメラワークから、一気に空撮へ。息詰まる緊張感を背景に、スケール感のあるエンディングは見応えがあります。
でも、観客には納得のいくような、いかないような、分かるような、分からないような結末は、好き嫌いが別れるところでしょうか。
原作者は、表題通り、“人間は野蛮へ回帰する”ということを言いたかったのかもしれません。
ストーリー展開と共に、本作の魅力は、やはり、豪華な俳優陣の演技、存在感にあるでしょう。
個人的にイチ推しのアーロン・ジョンソンは、ストーンの期待に応え、大麻で得た収益を途上国の支援に当て、暴力を好まない優しい植物学者を好演しています。
驚きは、歩き方まで米国人らしく演じていたこと!エゲレス人男性は、腕も背筋も真っ直ぐ伸ばして歩くのです。
対して、米国男性は、腕を曲げ気味に少しずつ猫背っぽく、ちょっとしたゴジラ的な歩き方をしますが、アーロンは、きちんと米国男性のそれになっていました。
テイラー・キッチュは、鋭い目の光りから、筋肉の動きまで、元傭兵らしく、暴力にもためらいのない、しかしハートの熱いナイスガイを演じ、適役です。。
トラボルタの腐敗ぶり、狡バカっぽさも笑えます。ハエックは、メキシコを代表する女優として、さすがの貫禄を見せつけます。
デル・トロの深い役作りは、脇役でも惜しむことがなく、麻薬カルテルの腹心が放つ残虐さ、欲深さ、狂気を怪演。
バラエティーと魅力に富んだ本作は、音楽好きなストーンらしく、ビートルズと、光溢れる海岸の空撮で閉められます。最後まで、“煙い”とは感じない (?)映画でした。
長文をお読み頂き、有り難うございます。本作は、3月8日よりTOHO シネマズスカラ座などで、全国公開されます。ぜひ、ご覧ください!私ももう一度、観てみます☆今度はアーロン・ジョンソン中心に…(^_-)☆キラリ