「お約束が満載のラノベ映画」劇場版 とある魔術の禁書目録(インデックス) エンデュミオンの奇蹟 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)
お約束が満載のラノベ映画
純白に金の縁取りしたシスター衣装の少女、ツンツン頭の少年、記憶喪失の歌姫と、なんかいかにもなキャラクターがメイン。
それに、警察や軍隊も真っ青な超武装の少女、黒いローブに赤髪の魔術師、車椅子少女のテレポーター、長刀を佩いた少女などなど、出るわ出るわ。なるほど、原作シリーズが現在31巻刊行されているのも伊達じゃない。
ファンにはまんべんなくキャラが散りばめられててヒャッホー!状態なんだろうけど、ファンでもない身には少々キツいところ。もっとも、ファンでもない人間が観に来ることはないだろうから、こんなことはマイナス要因でもないんだろうけど。
ドラえもん映画におけるゲストみたいなポジションにあるのが、鳴護アリサ。彼女の歌声は、科学サイド、魔術サイド両方にとってのガンになるという設定。
そこにシスター少女ことインデックス&ツンツン頭こと上条当麻の主人公コンビがからんで、両方の勢力から狙われるアリサを守るというストーリー。
ラノベが世間にウケているのは、アイコン化されたわかりやすい感情表現なのだと思うけれど、それが本作でもいかんなく発揮される。
そもそも当麻とアリサの出会いにしてからが、街頭ライブで聞き惚れていたら、アリサがコードにつまづいてバッタリ、当麻に追いかぶさってしまうという例のアレ。当然、インデックスが嫉妬して噛み付き攻撃というオマケ付。
ファンが見たら、「あ、やってるやってる」となるんだろうか。
それにしても残念だったのは、多彩なキャラクターが登場しているわりに異能戦にならないこと。
いや、某機動隊の採用している多脚戦車にクリソツな機体に登場した少女、赤髪魔術師と3人の魔女っ子弟子、そこに当麻らがぶつかるシーンはあった。それも割りとたくさん。確かに。
でも炎がボーン、風がビュンビュン、アスファルトを割って土が盛り上がるとか、その程度ではイマイチに感じてしまった。戦闘シーンだというのに、どういうわけか緊張感が足りない。
ラストだけは総出演っぽく、いろんなキャラクターがいろんな異能を使いまくったけれど、原作知らない観客は完全に置いてきぼり。
第一、衆人環視で流血沙汰とかして騒ぎにならないのはおかしくないか?
もしくは知らぬ間に人影がなくなったとか?
うーん、都合よすぎる。
ラスボスの目的も結末も理解しがたい。
八百比丘尼の伝説でも引っ張ってきたのかという按配。
ただ、どういうわけかハートに響くシーンもあって、それは音楽の使い方の妙だろうか。
メディアミックスとして、Tシャツやタンブラーはもとより、劇中の歌もCD販売されているのだけど、これが悪くないなと不覚にも思ってしまった。普段はアイドル曲などとんと縁がない身であるにもかかわらず。
映画と音楽の組み合わせは、使い方によっては妙技になるという好例だろうか。
では評価。
キャスティング:5(ラノベ層にウケる声なのだろうなと思う次第)
ストーリー:6(ラノベの空気感はよく出てるなと思う次第)
映像・演出:4(至極ふつう。異能バトルが地味に見えるのが少々マイナス)
ファンサービス:4(まんべんなくキャラ使いを目指したことから、主要キャラ以外はチョイ役扱い)
オチ:2(ラスボスが残念なことになってる)
というわけで総合評価は50点満点中21点。
たぶんファンにはオススメ。
外野が観に行って難癖つけるのは、たぶんルール違反。