「公言しないだけで、僕たちの身の回りにだって、この手のややこしい難題のひとつやふたつは転がっている」ションヤンの酒家 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
公言しないだけで、僕たちの身の回りにだって、この手のややこしい難題のひとつやふたつは転がっている
中国・重慶の屋台街で鴨の首が名物の居酒屋を営むションヤン。
いわゆる映画的な大きな何かは特に起こらないし、そういう設えにもなっていない。
いや、正確に言うと、麻薬中毒の弟とか、家を名義を巡って義姉と確執とかそういう問題は散りばめられているが、それ自体が主題とならないような工夫が施されている。
つまりは、言ってしまえば、公言しないだけで、僕たちの身の回りにだって、この手のややこしい難題のひとつやふたつは転がっている。
むしろ、そういった生々しい厄災の中心にいる主人公の、全てを捨て去り諦念で生きるでもなく、かと言って強欲に生きるでもない、女性特有の、しなやかなしたたかさが、体温と湿度を持って描かれている。
そしてその様は猥雑で美しい。随所に刺し込まれる喫煙のシーン、燻らせる紫煙にションヤンの姿が艶めかしく重なる。
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