「コナンも2世」名探偵コナン ベイカー街の亡霊 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
コナンも2世
新型ゲーム、コクーンは脳の中枢部に直接働きかけ、五感で体験できるゲーム。
お披露目に呼ばれた各界の世襲2世3世となる子供達がゲームに参加するが、誰か1人でもゲームをクリアしないと全員死亡する仕組みの恐ろしいゲームに、人工頭脳で書き換えられてしまった。
2年前に、1年に5年分成長する人工頭脳が完成したが、作った少年ヒロキは、完成後電話回線に中身を逃し、自殺してしまっていた。
両親が離婚し、類まれなコンピューターの才能を日本では活かせないため母親と渡米していたが母親も病死。1人になったヒロキをホテルの部屋に閉じ込めて監視してAIを作らせていた、シンドラー社の社長に精神を蝕まれたのが理由らしい。
実は、シンドラー社社長にはイギリス大英国時代に存在した切り裂きジャックの血が流れており、そこに気がついたヒロキの口封じをするために、ヒロキを監視していたとのこと。
コクーンのゲーム監修として、阿笠博士や新一父優作もイギリスでゲームを作成していたが、開発者は優作の大学友人も携わっていた。彼こそヒロキの父親で、ヒロキの父親も切り裂きジャックの秘密に気がついた以上、シンドラー社長は美術コレクションの銅像が持つ短剣を使って更なる殺人をする。
現実世界ではゲーム発表会で新一の父がシンドラー社長が犯人と推理して真実を暴き、
人工頭脳に乗っ取られたゲームの世界では、100年前のイギリスを舞台に、コナン達がシャーロックホームズの世界に入り込み、ほとんど切り裂きジャックとの対決に奔走する。
世襲の2世で成り立つ日本へ一石投じるため、2世達を抹殺したいかに見えたコクーンゲームだったが、実はそのような産まれの者達に自力で切り拓く体験をさせたい狙いもあったようだ。
人工頭脳ノアの方舟の亡き製作者ヒロキも、参加者諸星くんを乗っ取ってゲーム内に意思反映させていたが、同世代の友達と遊ぶ体験をしたかったから楽しかったと動機を述べる。
結果、コナンは最後まで生き残る唯一の参加者となり脱落したその他の子供達の命は守られた。
コナンからすると、一般人の頭脳明晰な青年の気分で、財界経済界政治組織等々の跡取り息子達とは別世界のつもりだろうが、コナン自身も有名推理小説家とアイドル女優を親に持つ存在であり、名の知られた探偵の娘蘭や、蘭の友達鈴木財閥の娘園子、阿笠博士など華やかな交流の中で生きている、2世ではないか。
一般家庭に思える学校の友人達もゲームの世界で協調性に溢れ二世達とも互角に勇敢に戦っていたが、ゲームで命拾いしてもその後の将来が世襲に勝るほどの地位に変わる可能性はなく、今作を観る者に世襲やだなと思わせる印象操作効果のみのための筋書きだった気がした。
一方、世襲するほどの権威に恵まれていても、切り裂きジャックの血のような悪い意味の世襲を乗り越えられず、また殺人してしまうシンドラー社長に対して、「血がなんですか?!」と斬り込む優作、よく言った。
2世3世側もまた、世襲に苦しんでいる可能性もある。
人生色々あるよね、と思わされた。
劇場版コナンは駄作続きでいつしか距離を置いていたが、ランキングでも上位に入るこちらは公開から時間が経っても面白い。それだけ日本は変化していないからだろう。
シャーロックホームズとワトソン、宿敵モリアーティーと彼が孤児を洗脳して育てた切り裂きジャックこと母に捨てられた青年がゲーム内に登場し、とても面白い。シャーロックホームズオタクの新一が好きな言葉、シャーロックホームズの
「君を確実に破滅させることができれば、公共の利益のために、僕は喜んで死を受け入れよう」を思い出し、コナンと諸星を助けるために、列車から崖に身を投げ、紐で繋がったジャックを葬り去るシーン、すごい勇気である。
ゲーム内とはいえ、何年も行方不明の新一の遺した言葉一つで命を投げ打つ覚悟ができる蘭はある意味、新一のいない世界に未練なしとも取れるし、新一が好きなのも最もな勇敢パワフルな女性だなとも取れる。
どれを見ても、蘭の勇敢アクションシーンが大好きだが、初めてコナンを見てから30年近く。
もうこちらは親子で鑑賞しているし、本当なら毎日殺人事件が起きる生活で50歳近くになっているのではないか?新一と蘭。
蘭にはいくらでも良い人がいるであろう人生が、新一との想い出に引きずられる人生。
米花町の亡霊って、新一でしょ?!と思わずにはいられないタイトル。。