「とても良い着地点」ガメラ3 邪神(イリス)覚醒 ドラゴンさんの映画レビュー(感想・評価)
とても良い着地点
いわゆる平成3部作の完結編としては、
申し分のないストーリーだと思う。
1作目の怪獣災害被害者を主軸として、
ギャオスの変異種を敵にもってくるあたりは、
昭和怪獣映画にはないテイストだし、
渋谷を舞台にした「怪獣災害の現場」も
実によく作りこまれていた。
また、その冒頭、渋谷駅前の風俗スカウトと女の子の
チャラい会話の最中に突然ガメラ対ギャオスが開始
されるのは、高速異動できるガメラならではだ。
他の歩く怪獣では、避難勧告で出てしまっているため、
唐突な戦闘はありえない。
が、しかし。あくまで当初どおりの企画に
こだわってほしかった。
元々大映では、毛利郁子という「実生活でも蛇が好き」
という変り種女優を主役とした「蛇シリーズ」があった。
昨今では『淫獣学園』や『妖獣教室』が
スマッシュヒットだった。
当時休憩中だったゴジラにとってかわるべく、
博報堂が仕掛けたのは、ヒット要因の合わせ技、
「和風伝奇テイストのエロティックホラー特撮」路線で
当初は固まっていた。
当初は前田愛も脱がすつもりで、
博報堂担当者はその気だったという。
実際、前2作のヒロインでもある藤谷文子を
前田愛のポジネガ関係に持ってくるためには、
プラトニックなガメラ&藤谷文子に対して
肉体関係のイリス&前田愛の図式は不可欠だった
ようにも思うし、金子監督の突然の変更のおかげで、
脚本の直しも中途半端。
本来は全裸で保護されるはずだった前田愛が
金子監督自身の「趣味に走りすぎていないか」との
自戒から着衣で保護される場面に変更になったのに、
同級生の男子中学生が(優等生なのに)警官に
レイプ犯のように扱われるという
不自然な展開になってしまった。
また、前田愛の意識と同化したイリスが
村人を惨殺するのも理由不明。疎まれていたとはいえ、
大量殺人の理由は見当たらない。
そもそもきつく当たっていたのはオバさんだけで、
オジさんは遠慮気味だったし、お兄さんは
あからさまに擁護してくれていた。
それならばお世話になっていた家のオジさんが深夜、
前田愛の部屋の前に立っているシーンを入れて
危険な関係を深読みさせるなり、なんらかの伏線がほしかった。
元々樋口監督も関わっているだけに、
当時大ヒット中だったエヴァの要素が入るのは自然だったし、
エヴァの人気の理由も妖しい関係が隠し味になっているのは
自明だろう。
なにも実際に脱がさずとも、肌色の水着なり、
方法はいくらでもあっただろうに。
さらに演技力のある前田愛が劇中やたら眠っているのも、
もったいないな、と思った。
ただ、あいかわらず音楽がすばらしく、特撮も名人芸レベル。
ギャオス軍団との決着がつかないラストも、
余韻を残してよかったと思う。
とはいえ、これは完結編として観れば最高のラストだが、
独立した作品としてはやや食い足りない。
私は1本の映画としては1作目が一番好きだったりする。