25日・最初の日のレビュー・感想・評価
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はじめてみるもの、ふれるもの、それは素敵なたからもの。
2020年5月6日 映画 #25日・最初の日 (1968年)鑑賞 ロシアを代表する世界的アニメーション作家ユーリー・ノルシュテイン監督の作品。セルロイドに緻密に描き込まれた切り絵をベースにした短編アニメ。 ロシア革命のプロパガンダの作品です。
プロパガンダと馬鹿にするなかれ!
ユーリー・ノルシュテインというアニメーション作家は本国のロシア以外では最も日本で愛されているという。 1987年に第2回広島国際アニメーション映画祭の審査員として初来日した際に手塚治虫から所望されて色紙に絵を描いたほどの大監督である。 ただし仕事はCGを一切使わない完璧主義であるため極端なまで遅くゴーゴリ原作の『外套』を40年以上創り続けてまだ完成していない。 かの黒澤明も彼のLD(今は懐かしいレーザーディスク)を繰り返し観ていたらしい。 2004年には日本政府から旭日小綬賞勲章も授与されている。 筆者がノルシュテインの作品を初めて観たのは0年代の中盤ぐらいだったと思う。 DVDを購入して観たのだが、その手のこんだ映像美に圧倒された。 特にそれぞれの作品で触れることになるが『霧の中のハリネズミ』と『話の話』の叙情的な美しさに心を打たれた。 そんな作品が2K修復されて改めてBlu-ray化された。 DVDと比較してみたが全く映像の鮮明さが違う。画面にちらつくゴミもなければ暗くてよくわからなかったところが明るく観やすくなっている。 ソ連時代に制作された作品なので、本作はソヴィエト革命を賞賛したなんてことはないプロパガンダ映画である。 ソ連を代表する革命作曲家であるショスタコーヴィチの交響曲を断片的に使用している。 筆者はかつて『ドミトリー・ショスタコーヴィチ ヴィオラ・ソナタ』というドキュメンタリー映画を観たことがあるが、実際はショスタコーヴィチもいつか亡命するんじゃないかとソ連から絶えず監視されることに疲れたり、やはり共産主義社会には疑問を感じていたようである。 10分にも満たない本作の題名は革命詩人ウラジーミル・マヤコフスキーの詠んだ詩に由来する。 本編では前衛画家ジョルジュ・ブラックの絵なども引用され、登場する人物たちの顔はしっかりと描かれていない。 最初と最後に子供に乳をあげる女性だけがしっかりと顔が描かれている。 また作品の後半はレーニンを礼賛する人民の記録映像が映し出される。 また当時斬新だった、ある画像を透かした向こうに別の画像が見える、多重露出という技術をソ連で初めて使った作品らしい。 もちろん内容的には革命を賞賛しているのだが、穿った見方をすれば顔を描かない兵隊は暴力の象徴にも見えるので暗に体制批判をしているようにも見える。 列をなして進む兵隊の後ろで紙で切り取られたような赤い女たちが踊るように画面を駆ける姿は兵隊に蹂躙されているようにも見える。 特に次にレーニンの戯画化された顔のアップのショットや顔のない兵隊たちのアップのショットが続く編集はそう受け取ることも可能だ。 ソ連に雇われながらソ連を批判する映像を創ったアニメーション作家というのは意外にも多くいて、バレるかバレないかのギリギリの線で勝負してバレるとお蔵入りなんてことがあったようだ。 筆者はそんなお蔵入りのロシア・アニメーションをいくつか観たことがある。 中には露骨なものもあったが、当時のソ連の社会状況にピンとこない筆者には微妙すぎて正直なところなぜお蔵入りとなったのかわからないものも多かった。 ただ洋の東西、思想の左右を問わず、たとえどのような制約があろうと、どの作家も自分の創りたいものをなんとかして創り上げたいものなんだなと想った。 本作も監督が表立って口にはしない隠された意味があるかもしれない。
アニメーションの神様
その美しい世界 の中の一作品として鑑賞 影絵が動いている感じが、とてもノスタルジックでした。テーマやモチーフには、プロパガンダもあるとおもいますが、作品の力強さを感じました。音楽もとても良かった。 中には難解な作品もありましたが、中世の騎士達が出てくる作品は本当にきれいで、ずっと見ていたいと思いました。 アニメはまだまだ子どものものというイメージあるかもしれませんが、ソ連、東欧の良い作品が、もっと広く紹介されてほしいものです。
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