向う三軒両隣り
劇場公開日:1948年11月9日
解説
「鐘の鳴る丘」と共に全国のラジオ聴取者に親しまれている連続放送劇の映画化で、先ず「白百合の巻」と「坂東家の巻」が製作される。製作は「愛情診断書」の武山政信の担当。毎週交代で原作を書いた八住利雄、伊馬春部、北条誠、北村寿夫の原作を「花ひらく(1948)」、「野球狂時代」の八住利雄が脚色し「エノケンのホームラン王」に次いで渡辺邦男が演出する。撮影も「エノケンのホームラン王」の友茂達雄である。出演者は「親馬鹿大将」の柳家金語楼、「黒馬の団七」の江川宇禮雄、黒川弥太郎、中村彰、「三百六十五夜(1948)」の野上千鶴子、「天の夕顔」の田中春男、「唄まつり百万両」の宮川玲子、清川虹子の他松竹の飯田蝶子、大映の浦辺粂子が特出し、東宝舞踊団出身の水谷真弓と桜木陽子のニューフェイスが出演する。
1948年製作/87分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1948年11月9日
ストーリー
(白百合の巻)本郷の大学近く、焼残った区域と焼跡が道路一つで区切られ、焼残った区域の道路に面して神田病院がある、女房が主人より三つ年上の家。その先の横町に亀造の家がある、亀造は車ひきで男やもめ、一男二女の四人家族。焼跡の中に喫茶店「白百合」があり、後家のまさに一男一女、伸一は絵書き、春恵は撮影所のワンサガールで伸一の好きな登美がこの店の店員である。白百合と少し離れて山田家のバラックがある。即ちここに向う三軒両隣りがある。近ごろ登美に心配事が出来た、それは夫が肺病で寝ているというのだ、夫があったということにがっかりした伸一にユウウツが重なったのは同友会の絵が落選したことだ。遂に伸一は家出してしまった。伸一の妹春恵は役がついたというので大喜び、さて撮影の日が来たが何と足のアップで腐ってしまう。その映画は明治物で人力車が必要となり亀造の処へ助監督の谷川が相談に来るが、頑固な亀造はなかなか応じない、次女のみどりは向う三軒両隣りの事には張切る父親の性格を利用する事を考えついた、春恵に本当に役をつけるという条件で亀造は出演する事になった。亀造は大スター三島きぬ子を車に乗せて走り出したがカツラが飛んでNGといった調子でにぎやかな撮影風景。伸一が家出してから月日は流れた。向う三軒両隣りの人達は絵画展覧会に出掛けた、会場に「母の肖像小林伸一」という文字を見てまさはびっくりした、伸一が登美の夫と思ったのは実は兄さんだった、伸一は安心して良い絵を書いたのだ。 (坂東家の巻)神田のところへ友人の小宮が大学の研究所に帰れと話をもって来る、博士婦人を夢見ている妻の秋子も賛成するが、医は人術の憲法で神田は反対である、更に夫人は愛情が足りないというので亀造を誘って亀造の長女加奈子が働いているキャバレーに現れ珍妙なダンス風景が展開される。一方亀造の長男精市は勤務先の堤工場の娘五月と想い合う仲であるが、身分の相違が二人の結婚への進行をふさぎ勝ちである、精市は亀造に結婚話を持込んだが、堤灯につり鐘だと一しょうされる、遂に民主的結婚説の精市との口論となり精市は家出してしまった。強い事を言ったものの亀造の心はさびしい、近くの空地で子供の野球試合に一役買ったりして心のウサを晴らしている。精市はあるアパートに仮住居をしているが、加奈子のキャバレーのダンサーマリが訪ねて来て精市に愛を訴える、精市はびっくりするが、もっとびっくりしたのはこれを見ていた五月ですっかり誤解してしまう。精市はヤケ気味で酒ばかり飲んでいる、精市は酔っぱらって怪我をして神田病院に現れる、ここで一芝居仕組まれる、生命危篤で「お父つあんお父つあん」とうなり続けているというので亀造が飛んで来た。五月の誤解もとけた、神田の論文も通過して秋子も博士夫人が実現した。向う三軒両隣り天下太平である、今日は精市と五月の結婚式、車ひきの亀造も今日は花婿の父親として人力車に乗ったが、車引きが未熟で亀造は気に食わない遂に亀造は紋付羽織はかまで人力車を引っぱって走り出した。