緑の果てに手を振る天使
劇場公開日:1951年5月12日
解説
三宮杉久の原作を、ヴェテラン犬塚稔が脚色、「絢爛たる殺人」の加戸敏が監督したもので「赤い鍵」の辻久一の企画である。出演者は、新派の大矢市次郎に、飯野公子改め、鳩えり子、「赤い鍵」の堀雄二、それに新人子役春野すみれが活躍することになっている。
1951年製作/87分/日本
配給:大映
劇場公開日:1951年5月12日
ストーリー
民江は満洲で両親を失い、引き揚げ援護局の河野秋子の努力でようやく東北の寒村に住む祖父守屋弥市の許に引き取られた六歳の幼女であった。弥市は一人息子豊吉が、自分の反対を押し切って満洲に渡り自分の知らぬ女と結婚してしまってから、人間嫌いになり、人里離れた汽車の線路ぞいのところに小屋を建てて孤独の生活を送っていた。そんな風で、孫の民江も厄介扱いにしていたので、民江は家の傍を汽車が通ると外へ出て、手を振るのを唯一のなぐさめにしていた。やがてここを通る列車の機関士たちも民江に応えて挨拶をするようになった。雪が解け春が訪れる頃には、弥市の心も民江の純真さになごみ、四月から入学する民江のために、貧しいながらも準備をととのえてやるのだった。そのうち、線路の傍で手を振る民江の姿が見られなくなり、機関士たちは民江の安否を気づかって、寒河江駅長に調べて貰うことをたのんで来た。民江は結核性の病気で高熱を発して寝ていた。山形機関区の機関士たちは民江を山形の鉄道病院へ入院させることにした。弥市は再び孫を人に奪われるような気がして反対したが、やがて人々の人間愛の深さに打たれ喜んで民江を彼等の手に托した。入院の日、特に汽車は民江の家の傍で数分間停車して、身動きの出来ぬ民江を乗車させたのだった。