銀座新地図
劇場公開日:1948年11月2日
解説
製作は「火の薔薇」につぐ小出孝。三木蒐一の原作『地下鉄伸公物語』より「風の中の牝鶏」(小津安二郎と協同)「シミキンの探偵王」の斎藤良輔と「男を裁く女」の荒牧芳郎が協同で脚色し、「秘密(1948)」につぐ瑞穂春海が監督する。カメラは「秘密(1948)」の布戸章が担当する。主演は「たそがれの密会」につぐ山内明と「肖像」の井川邦子でそれに「噂の男」「偉大なるX」の逢初夢子、「風の中の牝鶏」「青蛾」の笠智衆、「追跡者」「風の中の牝鶏」の殿山泰司らのほか新人であり第一回の向山和子が出演している。なおこの映画の主演には病気全快した折原啓子が出演予定とされていたが未だ無理であるため井川邦子に変更された。
1948年製作/59分/日本
配給:松竹・大船
劇場公開日:1948年11月2日
ストーリー
銀座界わいに山田老刑事の温情で更生しているのが椿美容院のマダムお澄、その家に同居している伸吉もかつては地下鉄伸といってならしたスリだったがやはり今は真面目に働く青年だった。そのとなりのアザミ洋裁店の京子は弟の啓吉と二人ぐらし。京子は伸吉が好きだった。啓吉は近ごろ悪い友人中根にさそわれて麻雀にふけり、不良あがりのヤミ屋南郷に四万円も借金をして、苦しまぎれに京子、啓吉らの恩人であり啓吉の主人である山藤の店の小切手をごまかして南郷にわたしてしまう。南郷はかねて京子にほれていたので、その小切手をおとりに京子をものにしようとたくらむ。南郷から小切手をみせられた京子はぎょう天するが四万円の金はどうすることも出来ず、といってそのことが恩人山藤に知れたら生きたそらはないと京子は悲しく決心して南郷の意に従おうとする。この事件を知った伸吉は、南郷のあとをつけまわして生がいやらぬと心に誓った指先で小切手をスリとって京子にかえす。京子は泣いてよろこぶが、しかしそのときは偶然に伸吉のスッた現場をみた山田刑事が伸吉を追ってやって来た。山田刑事は「お前だけは昔の伸にかえると思わなかった、さあこい!」とせっかく更生したと思っていた口やしさと怒りに伸吉をひきたてようとする。しかしマダムのお澄から一切の事情をきいた山田刑事はかえって伸吉の背中をたたいて京子のところへおいていく。「すみません、私のためにいやな思いをさせて……」という京子のことばに「おどろいたろう、昔のぼくを知って……」と伸吉は京子のもとを去ろうとする「いいえ……今の伸吉さんはいい人ですもの」京子は涙にぬれた瞳をあげて伸吉にすがりつくのだった。