劇場公開日 1949年7月19日

「【戦後の女性の生き方を具現化した近代的、民主的思想を持つ英語教師を演じた原節子さんのハリウッド女優の如き日本人離れした風貌、洋装姿が屹立し、国民的女優としての地位を盤石にした逸品。】」青い山脈(1949) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【戦後の女性の生き方を具現化した近代的、民主的思想を持つ英語教師を演じた原節子さんのハリウッド女優の如き日本人離れした風貌、洋装姿が屹立し、国民的女優としての地位を盤石にした逸品。】

2025年3月1日
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ー 石坂洋次郎の「青い山脈」の内容は巷間に流布していると思われるので、割愛。-

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は、映画化の際に石坂洋次郎からプロデューサーの藤本真澄に対し、”ヒロインには原節子を起用して欲しい。この小説はそもそも彼女をイメージして書いた物だから。”と注文を付けたという話を、石井妙子著「原節子の真実」で読んだモノである。
 本当かな、と思い鑑賞すると、正に青い山脈の主人公である近代的、民主的思想を持つ英語教師、島崎雪子は原節子さんしか合わないのではないかと思う程であった。

・劇中、島崎先生が赴任した田舎町の高校で、寺沢新子(杉葉子)が、大学生の金谷六助(池部良)の家に行き鶏の卵を買って貰った事から、彼女が六助と姓名判断に行った姿を見られた事で、女学生たちが新子に対し偽の手紙を書いた事を咎めるシーンで、彼女達を糾弾する島崎先生の台詞を記載する。
 ”貴女達は、学校の名誉のためにとか母校を愛する情熱とか言いましたが、そういう立派な名目で下級生や同級生を圧迫する。家のため、国家のためという事で、個々の人権を束縛して無理やりに一つの型にはめ込もうとする。日本人の今までの暮らしの中で一番間違っている事の一つなんです。”
 と、背筋を伸ばし堂々と述べるのである。
 この台詞は、今でも十分に通用する言葉である。
 この台詞を、風格ある美しさを持つ原節子さんが凛とした声で喋ると、実に見事なのである。

<そして、彼女の態度は旧弊的な町の人達に、動揺を齎すがやがて感化され自分達の旧弊的、保守的な考えを改めて行くのである。
 今作は、戦後の女性の生き方を具現化した近代的、民主的思想を持つ英語教師を演じた原節子さんのハリウッド女優の如き日本人離れした風貌、洋装姿が屹立し、国民的女優としての地位を盤石にした逸品なのである。
 そして、今作後、原節子さんは小津安二郎監督の「晩春」に出演し、小津監督を二人三脚で”世界の小津”にして行くのである。>

NOBU