恋三味線
劇場公開日:1946年12月17日
解説
終戦後沈黙を守っていた野淵昶脚色監督作品。
1946年製作/78分/日本
配給:大映
劇場公開日:1946年12月17日
ストーリー
杵屋七左衛門の高弟杵屋正太郎の三味線は師匠も驚く程の巧みなものであった。七左衛門の娘万亀子は正太郎を深く愛していた。正太郎は万亀子を妻として、師匠の跡目を継ぐはずと思われたが、万亀子に横恋慕する、同僚七三郎の罠に落入り、破門されてしまった。三味線一ちょう、腕一本が頼りの正太郎の旅が始まった。東海道の列車の中で、彼は、無札乗車のかどで難詰されている一人の女--廓を抜け出して来たお須賀という身寄の無い女--を救った。お須賀のために正太郎は身ぐるみ脱いだ。お須賀は彼の行為に感謝した、それからお須賀が歌い、正太郎が三味線を引いての道中稼ぎの二人の姿が街道筋を寂しく流れて行った。浮草稼業がわびしく続いて初めのうちは卑俗な曲をけっていた正太郎も生活のためには妥協して行かなければならなかった。しかし彼の腕は一段と冴えを見せていった。その腕前に惚れ込んだ薬問屋の小信の好意で、稽古場を正太郎は持つことが出来、浮草生活に終止符をと思ったのも束の間、思わぬ横やりでそれも長くは続かなかった。しかし、彼はその結果大阪の興行師大栄を知った。その頃、かつての師匠の娘万亀子は正太郎を訪ねてきたが、夫婦になった正太郎とお須賀をみて彼女は悄然帰京して七三郎と結婚した。時が流れた。杵屋七左衛門は、十代目の懇望で老いの身を引っ下げて来阪することとなった。しかし興行の当日七左衛門は老いのため右手が震える始末であった。彼の代行は万亀子の夫となった七三郎に決められたが、十代目はその未熟さの故にそれを忌避した。混迷のうちに、興行師大栄は、正太郎起用を思いたった。折から懐かしい師匠の三味を聞こうとして来ていた正太郎が場内アナウンスで呼ばれた。正太郎は楽屋裏に駆けつけた。師匠の衿をつけた代役の正太郎は今は恩讐を越えて総ての人々が手を握り合った。