金ちやんのマラソン選手
劇場公開日:1946年9月17日
解説
「ことぶき座」完成後十四ヶ月振りで着手する原研吉演出作品。
1946年製作/88分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1946年9月17日
ストーリー
村川はランニングの選手で、秋の学生大会に備えて毎日練習を続けている。彼は安アパートに住み貧しかったが、明朗なスポーツマンである。彼は学費を稼ぐため家庭教師の募集に応じて××製薬会社社長宅に行くが、その豪奢な生活と邸宅を見て義憤を感じ「かかる広大な邸宅は速やかに家のない人々に開放すべきである」と弁じて引き揚げる。ところが意外にも採用の通知が来る。それはその時の試験管である令嬢の夏子が兼六の気骨に興味を覚えたからである。温室育ちの卑弱な令息を健康にすべく、彼は令息を付近の広場に連れ出して街の子供達と一緒に運動をさせ勉強させる。社長夫人は兼六の教育方法には反対だったが、夏子は兼六に共鳴して彼を支持する。こんな事から夏子に好意を持つようになる。兼六のアパートの隣室に老いた父と二人で住むきよという娘がいる。きよは秘かに兼六を慕いなにくれとなく身辺の世話などしてやっていた。彼女の父は兼六が家庭教師をしている社長の製薬会社に働く老職工であった。たまたまこの製薬会社に働く者の当然の要求として待遇改善の運動が起き、きよも働く者の味方として父を激励する。ただ兼六は当然彼女の味方にならなければならなかったが、心の片隅に夏子の面影がふと浮かぶ時、何か後髪をひかれる思いであったが、「正しい者のために戦うことはスポーツの正道であるフェアプレイの精神ではありませんか」ときよに説得されて、私情を捨てて戦うべく決心する。要求を拒絶された代表は社長に膝詰談判するために押し寄せるが、暴力団は彼等を追い払おうとした。兼六は暴力団の矢表に立った。彼は日頃鍛えた得意のランニングを利用して暴力団に対抗する。向かうと見せては逃げ逃げると見せては向かい、飛鳥の如く馳せめぐり、散々に暴力団を疲労させる。彼が活躍中に代表者は社長に談判して遂に要求を貫徹することが出来たのである。彼はきよを忘れて、一時たりとも社長令嬢に心惹かれたことを恥ずかしく思った。そして彼女の激励のもとに毎日朗らかな練習を続けるのであった。