朱鞘罷り通る
劇場公開日:1956年11月20日
解説
「やくざ大名」につぐ市川右太衛門主演の“此村大吉”物語。故山中貞雄の名作より久方ぶりの三村伸太郎が脚色、「忍術快男児」の河野寿一が監督、「やくざ大名」の伊藤武夫が撮影を担当する。主な出演者は、右太衛門をめぐって「ふり袖捕物帖 若衆変化」の大川橋蔵、「やくざ大名」の花柳小菊、千原しのぶ、「鞍馬天狗 白馬の密使」の喜多川千鶴、「ふり袖捕物帖 若衆変化」の浦里はるみ、他に進藤英太郎、薄田研二など。
1956年製作/88分/日本
配給:東映
劇場公開日:1956年11月20日
ストーリー
泰平の世が続き、かつての精鋭旗本八万騎も、今は無用の長物視。世をすねた無頼の旗本が巷に溢れていた。その一人此村大吉は情婦小えんの情に溺れ自慢の朱鞘を一枚看板に放埒の日を送っていた。色事師を以て任ずる大吉はある日、武家風の美女に一杯喰わされた。旗本松平帯刀の用心棒を勤める仲間の甚兵衛から、例の女が一杯喰わせたのは帯刀の差金だと聞いた大吉は、早速甚兵衛と計って松平家に乗込み十八番の強請で二百両を巻上げた。帯刀は執心の小えんを大吉に奪われたことから激しく大吉を憎んでいた。その頃、市村座の人気役者中村仲蔵は仮名手本忠臣蔵の定九郎役をふられ趣好に苦労していた。仲蔵を励ます相愛の料亭の女将おみつには両国の顔役大五郎がつきまとっていた。妙見様に芸の工夫を願かけする仲蔵を易者妙見堂も励ますが、彼は幼い仲蔵を捨てた実の父であった。一方、帯刀は甚兵衛が大吉と共謀だったと知り激怒、報復を計っていたが、その邸へ乗込んだのが甚兵衛。彼は大吉から貰った金を使い果し強請に乗込んだのだが忽ち殺された。甚兵衛の身を案じ大吉は帯刀の邸へ向ったが風を巻くようにして行く彼の姿をふと見たのが仲蔵。大吉の姿に彼は定九郎役への暗示を得た。初日の市村座は山崎街道の定九郎で凄い人気。黒紋付に朱鞘の定九郎、それは大吉の姿にそっくり。評判にヘソを曲げた大吉は市村座に乗込んだが、妙見堂の親心に気を変え逆に仲蔵を励ました。やがて大吉は父の死とお家改易を知らされた。小えんと共に旅に出ようとしたが、彼を邪魔する帯刀、大五郎は果し状をつきつけた。が、菩提寺ケ原の決闘は朱鞘一閃、大吉の勝利に帰し、大吉は小えんと新天地を求めて旅に向った。