ニコヨン物語

劇場公開日:

解説

人生の裏町、山谷のドヤ街に咲き出たペーソス溢れるニコヨン生活記録。ニコヨン作家須田寅夫の原作から「金語楼のお巡りさん」の川内康範と井上梅次が共同脚色し「火の鳥(1956)」についで井上梅次が監督、岩佐一泉が撮影を担当。出演は「流離の岸」の三國連太郎、「わが町」の大坂志郎、「甲武信嶽伝奇 (三部作)」の利根はる恵、「帆綱は唄う 海の純情」の小田切みき、「しあわせはどこに」の殿山泰司、その他丹下キヨ子、山岡久乃、柳谷実、小林重四郎、中原早苗など。

1956年製作/95分/日本
配給:日活
劇場公開日:1956年9月11日

ストーリー

東の空が白む頃、山谷ではアチコチの簡易旅館の窓が開きニコヨン連中はまず空を見る。今日は天気。“希望館”から飛び出したのは天下の為さん、元将軍、その他ニコヨン大隊。目標は職安である。その晩、館の二階で一同がくつろぐ中に、労働組合の執行委員田崎と同志とよ子は就労対策のビラ造りに懸命。為さんは新米の元教員耕介に日給の使い方を伝授。ふと向いの“昭和館”、源さん夫婦の部屋を覗いてどきり。パン屋に住込奉公している源さんの娘君子の姿。耕介も彼女に眼をつける。昭和館の住人、競馬狂の与五さんは、女房お虎の頑固親父寿し金の来訪に仰天、逃げ出す。寿し金は娘のニコヨン暮しが恥しく別れ話を持ち出すが、お虎にしてみれば駈落ちした程好きな男。それに下町娘の意地もある。深夜、けたたましい悲鳴。厳さんの女房お栄が家出したのだ。泣き叫ぶ厳さんを皆はなだめ落着かせたが、翌日は雨。アブレだ。独り者となって夫婦者専用の昭和館から希望館に移った厳さん始め皆の顔は暗い。そこに駈け込む与五さん、折角当てた大穴の配当をやくざに奪われたという。だが所詮はアトの祭。愛想をつかしたお虎は家出し、寿し金の店に帰ってしまう。ある晩、六さんとおあきの結婚式、新居の披露宴で皆の祝福を受けてめでたしとなる。だが翌朝どんぐり長屋のおかねさんが一家心中。死ぬだけの薬が買えず命はとりとめたが笑えない喜劇。それでも皆はホッとする。ある日、源さんの許にクリーニング屋の主人高井が来て息子に君子をくれという。源さんは為さんと君子の婚約の手前困るが、為さんは自分の気持を押し隠して賛成。連日の雨天にニコヨンは団結、特別手当支給を職安に交渉。警官隊と乱闘で田崎は検束。だがハハキトクの電報に署長の許可で彼は郷里に戻る。労働者大会の日、働きながら青空を仰ぐ為さん達の表情は明るい。

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