甲武信嶽伝奇(三部作)
劇場公開日:1956年8月22日
解説
甲武信嶽に眠ると伝えられる秘宝をめぐり、善と悪、正と邪の対決が卍巴になって繰りひろげられる娯楽時代劇。野村胡堂の原作から「疾風!鞍馬天狗」の松浦健郎が脚色、「唄祭り 江戸っ子金さん捕物帖」の冬島泰三が監督、「怪奇黒猫組」の古泉勝男が撮影を担当した。主な出演者は「極楽剣法」の坂東好太郎、「悪魔の街」の中川晴彦、「続ただひとりの人」の名和宏、「名寄岩 涙の敢斗賞」の山根寿子、「雑居家族」の利根はる恵、その他河野秋武、澤村國太郎、尾上菊太郎など。なお美多川光子が入社第一回出演する。
1956年製作/日本
劇場公開日:1956年8月22日
ストーリー
第一部・黄金地獄--文化十二年。財政再建を計る江戸幕府は公儀金山奉行方田村吉右衛門の伜吉六が指揮する測量隊を武、甲、信三州にまたがる甲武信嶽の金鉱開発に向わせた。だが測量隊は、二百数十年前から山中に住みついて信玄村をつくる武田一族の落武者達に襲われ、吉六も一族の阿具利婆に大切な測量図を奪われて逃げ帰った。その頃、江戸には入墨を求めて人肌を覗き廻る武田菱の紋所をつけた覆面の怪人が横行していた。ある夜、馴染の芸者おこんと酒を呑んでいた田村が自宅の火事に急ぎ戻ると、離れで病床に伏していた旧友久助は背中に彫った地図の入墨を武田菱にはぎ取られて死んでいた。二十年前、平助、久助、文七の三人やくざに奪われた甲武信嶽金抗秘図を求めて江戸に入り、田村邸の女中に住みこんでいた集落の娘お仙は主人の背に入墨を見つけたが吉六に疑われ殺されかけた。お仙の急場を救ったのは何と武田菱だった。田村は吉六の嫁に望む久助の娘お美乃を、火事の折助けた火消しと組の文七と伜伊太朗を自宅に招いたが、文七を昔のやくざ仲間と知って驚く。だが文七は武田菱に襲われ、伜伊太郎に向って自分こそは二十年前、甲武信嶽で信玄の嫡流原武太夫を殺し、秘図をお互の背に分け彫りして逃げた三人やくざの一人であると打ち明け、武田菱の正体は設楽道場の主七十郎に聞けと遺言して死ぬ。武田菱を追う捕物陣が殺到する中に、かねて心を惹かれる七十郎を見つけたおこんは、彼と連れ立って屋形船で大川を下って行った。第二部・人肌地獄--三人やくざに奪われた秘図の行方を探して、甲武信嶽から江戸に潜入していた阿貝利婆は、文七の背に入墨ありと知り、墓を掘り起して地図の一枚を手に入れるが武田菱に奪い取られた。地図の謎を知った伊太郎は吉六のため幽閉されたが、恋するお美乃共々七十郎の扮した武田菱に救われる。この頃、と組の半次は田村邸の床下で、地図がそろった上は甲武信嶽遠征をという父子の密談を聞く中、吉六に捕えられた。偽武田菱の正体を吉六と知るおこんは彼に斬られ、田村から聞いた遠征計画を七十郎に告げて絶命した。夜半、田村邸に忍び入った七十郎は吉六配下と捕方に囲まれ、危くも大川に飛び込んだ。第三部・決闘地獄--武田菱に救われた恩義を忘れぬお仙は、弟三郎と川岸で失神していた七十郎を助けた。彼は捕方に救出された半次の知らせで総てを知った伊太郎お美乃らを連れ、田村父子の後を追った。お仙と三郎も七十郎を追う。甲武信嶽に着いた七十郎は隙を見て田村父子を襲うが、信玄村の武者の遠矢に会い機を逸した。田村一味は阿具利婆の手勢に襲われ全滅したが、吉六は父の死体から入墨を写し取り、七十郎一行に遅れたお美乃を捕えて金坑に進む。吉六を妨げようとした婆は彼の短銃に倒れるが、その隙にお美乃は逃れた。信玄村の一隊を前に七十郎は、伊太郎こそ武太夫の嫡男信昭であり、幼い頃、集落の統率を企む婆に殺されかけた処を七十郎が救い、文七に養育させたことを明らかにした。悪事を悔んだ久助が入墨を彫り直したとも知らぬ吉六は、鴉谷に迷い込み鴉群の餌食となった。だが、お美乃の背に真の地図を見た伊太郎は宝など不要と決意。翌朝、七十郎、お仙らと連れ立ち、落武者達に見送られて甲武信嶽を後にした。