森繁よ何処へ行く
劇場公開日:1956年6月14日
解説
キノトールと小野田勇の合作による、ラジオ・ロマネスク“わが街に詩あり”の映画化。脚色は「婚約三羽烏」の長瀬喜伴と「若夫婦なやまし日記」の新井一が共同で担当し、監督・撮影は「鬼の居ぬ間」に次ぐ瑞穂春海、三村明のコンビである。主な出演者は「鬼の居ぬ間」の森繁久彌、淡路恵子、「鼠小僧忍び込み控」の香川京子、「ならず者(1956)」の岡田茉莉子、「妻の心」の杉葉子、「あの娘が泣いてる波止場」の宝田明その他若原雅夫、斎藤達雄など。
1956年製作/81分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1956年6月14日
ストーリー
土木技師の森繁太郎は若い頃、大変な酒乱だった。ある日、彼は酒場“アーヌ”で他の酔客にからみ、乱闘の末、外科の石田博士の御厄介になるが、そこに現われた新任の女医藤井節子に惹かれて、彼独特の口説きの上、めでたく結婚した。八年後、節子との間に、めぐみという女の子まで生れた繁太郎の家庭生活は幸福そのものだった。だが八度目の結婚記念日に、かつて節子の誕生日を石田博士と三人で祝った思い出のレストランで過そうと出かけた繁太郎は、自動車事故の突発で妻を失い、悲嘆のどん底に突き落された。妻亡きあと、繁太郎は一人娘めぐみの生い立ちにのみ生き甲斐を感じていた。ある日、めぐみの買った薬品の懸賞に当選して、伊豆半島一周旅行に出掛けた繁太郎親子は、バスの車中で喫茶店のマダム圭子と知合いになった。甘えかかるめぐみに向って旅行中はママになってあげようと約束した圭子は、帰途、修禅寺の旅館では繁太郎親子と同宿する程に打ち解け、繁太郎も久しぶりにうるおいある日々を楽しんでいた。だが旅館に現われた旦那芹沢の姿に圭子は居たたまれず、親子から去って行った。それから十二年、二十になっためぐみは若山明という青年と婚約し、結婚も近日に迫った。父親繁太郎は妻なきあと、男手一つで育て上げた娘の幸福な未来に満足感を押え得ないものの、一抹の淋しさは覆いきれなかった。それに気付いためぐみは明との話を見合せても父と一緒に暮そうと考えたが、繁太郎は結婚こそは女の幸福だと強く反対した。挙式の日、花嫁姿のめぐみを見送った繁太郎は放心したように銀座の裏通りを歩く中、スリを働いた娘美智代と知り合う。めぐみと同い年の彼女もやがて感慨にふける繁太郎を残して去った。その夜、人気のない遊園地で一人、豆電車に乗った繁太郎は、節子、めぐみ、圭子、そして美智代の姿を想い浮べつつ、新しい仕事への情熱を燃やしていた。