銀心中のレビュー・感想・評価
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うまづら電車
冒頭は雪深い鉛温泉で彷徨う佐喜枝の姿。手にはカミソリを持っているので、自殺するんじゃないかと心配になる温泉の使用人・源作(殿山泰司)。
喜一が出征し、やがて珠太郎も出征。空襲がある直前に、喜一が戦死したという情報がもたらされる。そして理髪店は空襲に遭い、廃墟となり、一旦は故郷の清水に帰る佐喜枝であった。一旦は東京の理髪店を営む栗本(菅井一郎)の元で働くが、主人に犯されそうになる佐喜枝。そこへ珠太郎が復員してくる。2人は結ばれ、共に稼いで跡地に店を構えようと奮闘する。そして3年が経ち、小さな店を建てたが、そこへ戦死したはずの夫・喜一が帰ってくる。珠太郎は自責の念にかられて家を飛出し、伊東で働き始めた。
2人の関係を容認するが、珠太郎が飛び出したことで、よりを戻そうとする喜一。しかし、喜一に対しては善い人すぎるため「別れてください」と懇願する佐喜枝であった。珠太郎は佐喜枝の故郷である清水で働いていると聞き、いてもたってもいられない佐喜枝は逢いに行く。そこでは佐喜枝の兄も説得に訪れ、2人は綺麗に別れたかのように思われた・・・
戦後6年経ち、ふとしたことから珠太郎が花巻温泉近くの銀温泉(鉛温泉)にいると耳にした佐喜枝は1週間分の金を持って彼に会いに行く。そこでは温泉芸者の女梅子と関係を持っていた珠太郎がいたのだが、佐喜枝を避けるように姿を消した。それでも追いかける佐喜枝。そして吹雪の後、佐喜枝と珠太郎は別々の場所で死体となって発見される。「何で一緒に死ななかったんだー?」と泣き叫ぶ源作の言葉も印象的なくらい、喜一に気を遣って同じ場所で死ねなかった2人だった。
おばあちゃん役ではない北林谷栄、梅子と二役をやってのけた乙羽信子、運命を変えてしまうことを伝えてしまった町内会長の下條正巳もいい。
なぜだか“うまづら電車”と呼ばれる、極端に幅の狭い電車もいい!
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