母ふたり
劇場公開日:1955年12月13日
解説
川口松太郎の原作を大木弘二が脚色、「三等社員と女秘書」の野村浩将が監督、「王将一代」の平野好美が撮影を担当した。主なる出演者は「珠はくだけず」の三益愛子、「柔道流転」の安西郷子、「姿なき目撃者」の夏川静江、「風流交番日記」の宇津井健など。
1955年製作/91分/日本
劇場公開日:1955年12月13日
ストーリー
武田友子は、夫が密貿易の前科者となるに及び、娘みさ子の将来を想って、古い知己の有本雪子を訪れ、雪子の実娘として育てて貰うことを頼んだ。可愛い娘を手放す辛さよりも前科者の娘の烙印を負うみさ子の一生の不幸を考えたからである。その日から十八年の歳月は流れた。洋裁店を営み、不幸な夜の女たちを更生へと暖い手をのべる一方、バーを経営する友子は、彼女たちから母のように慕われ、尊敬されていたが、或日、偶然、一人の女学生を交通事故で怪我をさせてしまったが、それが何とみさ子であることに気づき、一旦思いあきらめた娘への想いはひそかに再燃した。友子の心を察した雪子は、決してみさ子に近づかないことを条件に、友子にみさ子を会わせてくれた。希望に燃えるみさ子は、友子の洋装店で夜の女たちと一緒に洋裁を習うことになった。友子と親密になったみさ子は自分の恋人義雄を紹介するが、友子はその結婚を心からお祝いしてやる気持になった。ところが、或晩、友子の嘗ての夫である十吉が、バーに姿を見せ、雄々しく生活を立て直した友子に金を無心したが、友子はきっぱりと拒んだ。しかしみさ子の身上をばらすと脅かされて心乱れた彼女は、ふとしたはずみに彼と掴み合いになり、十吉は不幸にも橋の下に転落し死んだ。法廷では、被告友子の嘘だらけの陳述から、計画的殺人の嫌疑をかけられた。傍聴席のみさ子は遂に我慢ができず証人台に登った。「実の子の私の幸福のために、自分を犠牲にしているのです」と彼女は叫んだ。未決囚の友子は、みさ子や義雄、洋装店の娘たちに見守られ乍ら、淋しげに、然し満足そうに収容所の門をくぐって行った。