一本刀土俵入(1954)
劇場公開日:1954年6月29日
解説
かつて日活が稲垣浩監督で映画化した事もある長谷川伸の戯曲の再映画化で、「醉いどれ二刀流」の犬塚稔と「濡れ髪権八」の鈴木兵吾の共同脚本を、「疾風愛憎峠」の佐々木康が監督している。撮影、音楽ともに「疾風愛憎峠」の三木滋人、吉村正志である。出演者は日活作品の時と同じ片岡千恵蔵(悪魔が来りて笛を吹く)のほか、「花の長脇差」の高峰三枝子、「弥次喜多 金比羅道中」の徳大寺伸、「太陽のない街」の多々良純など。
1954年製作/87分/日本
配給:東映
劇場公開日:1954年6月29日
ストーリー
下総取手の宿の暖味安孫子屋の前で、ごろつき船戸の弥八が酒に酔って暴れている時、通りかかったのはふんどし担ぎの茂兵衛であった。巡業の旅先で見込みなしと追い出された彼は、江戸に帰って部屋の女将に願いを入れるため、ここまで来たが空腹で歩けなくなっていたので、一度は弥八につきとばされたが、頭突きを喰わして相手を追払う。彼に同情した酌婦お蔦は、彼に食事を振舞い有金に櫛、箸まで添え、「一日も早く横綱の土俵入りを見せておくれ」と別れた。喜んで江戸へ向う茂兵衛を弥八等四人のやくざが利根の渡しで待伏せたが、腹がくちれば何の訳もなく叩きふせた。然し逃げ腰ではらった弥八の一刀で彼は膝を傷つけた。それから七年。旅姿もりりしいやくざ風情の男が取手に現われた。足の傷が因で相撲を断念し、いつしかやくざ稼業で男を売る在りし日の駒形茂兵衛であった。お蔦を求めてここへ来た彼は、弥八が今では界隈の顔役となり、ずっと以前に逃げた夫辰三郎を待つお蔦は、飴売りをして娘お君を養っていることを聞く。その時、河向うの波一里儀十一家は素人のイカサマ師を探していたがその男こそ八年前に姿を消した辰三郎だった。八年目に再会した夫婦は、子供をつれてすぐ逃げようとしたが、早くも儀十と弥八一家に囲まれた。そこへ立寄った茂兵衛は彼等を取ってなげ、これがせめてもの土俵入りでござんすと、涙で見送りながらお蔦等を逃がしてやった。