この恋!五千万円
劇場公開日:1954年1月3日
解説
菊田一夫の放送劇「かもめ」を「無法者」の八住利雄が脚色、佐伯幸三が監督した。「坊っちゃん(1953)」の山崎一雄、「君の名は 第二部」の古関裕而がそれぞれ撮影、音楽をうけもっている。出演者は、「浮気天国」の伴淳三郎、「びっくり太平記」の柳家金語楼「幸福さん」の伊豆肇、「母の湖」の三益愛子、「一等女房と三等亭主」の小川虎之助、「赤線基地」の根岸明美、「次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路」の豊島美智子、「サラリーマンの歌」の坪内美子、宝塚の浅茅しのぶなど。
1954年製作/84分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1954年1月3日
ストーリー
稀代のペテン師として悪名を売る長曾我部久太郎は、散々荒した東京を捨てて、志摩半島ちかく、渡鹿野島に高飛びした。島一番の長者俵堂家が行方不明の相続人久太郎を探ねあぐんでいるときき、早速その久太郎に化けて乗りこんだ。俵堂家の当主お登代は盲人だが、顔を撫でれば真正の息子は判明するとあって、何十人も現われたニセモノを退散させていたのである。が、意外にも登代は久太郎を我が子と認め、涙をながしてよろこんだ。遠縁にあたる役場の助役吾一や、県議の亮助がしきりにニセモノの証拠をつかんではたきつけるが、登代の信念はびくともしない。名ペテン師の身上をみろ、と久太郎も大得意である。登代には久太郎の妹にあたる娘昌枝があり、この島一の旅館を経営している。かつて盲目の登代をすて、妾のおふみと一緒に満洲に渡った夫が窮死してより、おふみともども引取った子どもが、昌枝である。御曹子になり澄ました久太郎には、海女の志保や女子大学生の君子など引く手あまただが、本人は美しくやさしい昌枝に心をひかれていた。が、それを打ちあけようにはペテン師の仮面を脱がねばならず、久太郎もさすがに苦悩の味を知る。昌枝の兄として日々を経るうち、彼の心にほほのぼのとした善意が蘇えってくる。小学校の改築や図書館建設、不漁にくるしむ海女たちの生活救済に惜しげもなく寄附金を投げだし、島の人望も彼の上に傾いてくる。とこうするうち、東京から探偵が長曾我部の調査にやってきた。一夜久太郎を追い出そうとするおふみと口論した登代は、ショックで急死する。追求の手をかんじた久太郎は、吾一、亮助、ふみ、昌枝らをあつめて一切を告白したが、意外にも探偵らの調査は長曾我部がかつて失踪した俵堂の跡取息子に相違なしという証拠をみつけてくる。さらに昌枝がじつはおふみと共謀して俵堂家を乗取ろうつもりの大ペテン師と判明する。急転直下、ペテン師の恋は実をむすぶこととなった。久太郎は正真正銘の相続人として遺産を公平に分配したあと、じぶんは一文を身につけずに昌枝ともども刑事にひかれて、しかし心ははればれと島を去った。