誘蛾燈

劇場公開日:

解説

『婦人朝日』に連載された広津和郎の原作を「広場の孤独」の猪俣勝人と「花の中の娘たち」の山本嘉次郎が共同脚色し、山本嘉次郎が監督している。撮影も「花の中の娘たち」の完倉泰一。出演者は「青春銭形平次」の杉葉子、大谷友右衛門、「続思春期」の沢村契恵子、「かっぱ六銃士」の八千草薫、「坊っちゃん(1953)」の池部良、「白魚」の上原謙など。

1953年製作/78分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1953年10月7日

ストーリー

佐伯美津子、小森田みどり、染井しげ子の三人は下高井戸に一緒に下宿して、行商、事務員、パチンコ屋とそれぞれ働き乍ら大学生として勉強を続けていたが、辛いアルバイトの憂さを焼酎で晴らす時もあった。しげ子のバイト先のパチンコ屋の若旦那清吉は何かしげ子の歓心を買う。みどりは近所の貧しい画家山形と知り合い、一夜山形の戦友権藤も加え、美津子、みどりと四人で宴を張り、帰りの遅いしげ子を迎えに行こうと家を出るが、清吉と連れだっていたしげ子は夜警小屋に身を隠し、清吉に唇を奪われてしまう。しげ子が次第に清吉の誘惑に乗せられたり、親友の愛子が婚家を出されたりするのを見るにつけ、作家志望で苦い恋愛の経験を持つ美津子は腹が立つ。権藤の援助で銀座のギャラリーに個展を開いた山形は、はじめて五、六点絵の売れたことを喜ぶが、愛子の母にみどりが頼んだ事実を知って失望するが、しかし結局、みどりの愛情を知って結ばれる。勘当された清吉がしげ子の愛情の支えで真面目に働くようになるのを聞いて、美津子は改めてしげ子を見直した。山形とみどりの恋愛の成立で、急に一人になった美津子は淋しかった。彼女は女の幸福を考えた。自分の苦い経験だけで人生を考えていた誤りを痛感した。暗い夜の道、権藤は控え目に、しかし真剣に美津子に求婚する。誘蛾燈を見つめていた美津子は「考えておきます」と言葉を残すと一人闇の中に消えて行った。

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