坊ちゃん重役
劇場公開日:1952年8月21日
解説
製作は「悲しき小鳩」の山口松三郎が担当、雑誌「キング」連載の中野実の原作から、「本日休診」の斎藤良輔が脚色し、「悲しき小鳩」に次いで瑞穂春海が監督したもの。撮影は同じく布戸章が当っている。出演者の主なものは、「お茶漬の味」の鶴田浩二、「悲しき小鳩」の佐田啓二と岸恵子に、北龍二、市川小太夫、高橋豊子、吉川満子、日守新一、斎藤達雄、多々良純、幾野道子などの脇役が顔をそろえ、売出しの新人紙京子も加わっている。
1952年製作/100分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1952年8月21日
ストーリー
東京家具製造株式会社社長長谷部謹三の一人息子山太郎は、京都の祖父母吉兵衛、米子夫妻の手で育てられ、京都の大学を卒業した。そこで社長の息子であることを秘して父の会社の平社員として働くことになり上京した。彼は月賦販売係に配属され、先輩株の比野の指導を受けることになり、下宿も彼の部屋へ同居させて貰った。比野は東京家具のビルの地下の床屋の娘あき子に夢中になっていたが、その橋渡しを山太郎に頼んだ。床屋の親爺重吉は、長谷部社長とは古くからの知合いなので、あき子も山太郎の身分を知っていたが、比野の使いであき子に逢ったのを山太郎自信の求婚と早合点してしまった。困った山太郎は、月賦集金で知合ったマネキンガールの野方智賀子に恋人代理をつとめて貰って窮地を脱した。そんなところへ、京都の祖父母が山太郎の許婚の京子を連れて上京したので、彼は久しぶりに父の家へ行き、謹三が東京近郊の土地を買い、元オリンピック招致委員会理事の、野方清親元男爵と令息の斡旋で大競技場を建設する計画のあることをきいた。ところが、その後ふとしたことから、この競技場建設に智賀子の兄、野方五郎が関係していることを知って智賀子にそのことを話した。京子が山太郎の下宿へ来て東京を案内してくれとねだっているとき、智賀子が訪ねて来て、山太郎に是非茅ヶ崎まで同行してくれという。山太郎はその真剣な顔に、不満そうな京子を残して家を出た。その山太郎が茅ヶ崎で見たのは、智賀子と五郎の父で、気の毒にも気の狂った清親元男爵の姿だった。智賀子の好意で、東京家具は身をもちくずした野方五郎の欺偽にひっかかるのをのがれたのだった。数日後山太郎の見送る大阪行特急列車の窓には、秋の結婚を楽しみに京都へ帰る京子や、吉兵衛老夫婦、めでたく結婚にゴールインした比野とあき子の新婚旅行組の明るい顔と、狂人の父を看護しながら郷里へ帰る智賀子の淋し気な顔とがあった。