四十八人目の男
劇場公開日:1952年6月26日
解説
読売新聞連載の大佛次郎の小説を原作者自らが高橋傳と共同脚色し、「お洒落狂女」の佐伯清が監督、「朝の波紋」の三浦光雄が撮影に当たっている。出演者は「修羅城秘聞 双龍の巻」の大河内傳次郎、「お国と五平」の大谷友右衛門、「惜春(1952)」の山根寿子、高堂国典、市川段四郎、藤原釜足、沢村契恵子等々である。
1952年製作/109分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1952年6月26日
ストーリー
元禄十四年三月十四日江戸城松の廊下における主君内匠頭の刃傷以来、小山田庄左衞門の過激な情熱は復讐への夢となっていた。卑怯な家老大野を襲ったが、そこで彼が味わったのは人間の悲しい宿命と苦悩であった。復讐に大きな意義を認めない大石内藏助ははやり立つ人々を抑えながら山科に留まるが、内藏助の身辺をうかがう間者小關新九郎に挑んで破れた庄左衞門は、「命が惜しければ地に両手を突き謝れ」と言われ、屈辱に青ざめながらも次第に死という黒い影に囲まれていった。この虚脱状態に置かれた彼を救ったのは、おえん、おせいという美しい姉妹だった。江戸に来た庄左衞門は仇を討たなければならない胸の深みに不安を感じながらも、激しく言い寄るおえんと深い仲になっていた。一方、彼の弱点をつかんだ新九郎は、彼を操って赤穂浪士の動向を察知しようと策した。いよいよ内藏助は仇討ちの目的で江戸に入ってきたが、何人かの同志は離脱し、庄左衞門も今では仇討ちを懐疑をもって眺めていた。庄左衞門を慕っていたおせいは彼と姉の秘密を知り、本所吉良邸に奉公に出ていく。同志の者は間者におせいを利用しろと勧めたが、庄左衞門にはできなかった。討ち入りの晩、おえんが汲む酒に酔いしれた彼は何事も忘れ、主君のために死ぬ人々と一緒に死にに行くことができなかった。おえんも庄左衞門を誰にも渡したくなかった。新九郎が彼を訪ねて赤穂浪士の動静を探りに来たのは、既に四十七士が討ち入っている頃だった。ひややかに「大石は本所にいる」と聞かされても、新九郎は彼が討ち入りに加わらないことはないと信じていた。最後の一瞬、新九郎は彼から仕返しを受けたのである。一夜が明け、同志たちが本願を果たしたとの朗報に、彼の今までの苦闘に初めて解決がついた。今日限りで新しい生き方を始める、とおえんの元を去っていく庄左衞門は、勝鬨を挙げて引き揚げる浪士とは違う道を、ただ一人孤独な淋しい思いで歩いていった。