七人の刑事 終着駅の女のレビュー・感想・評価
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殺しの舞台は希望を胸に抱いた金の卵が降り立つ60年前の上野駅! 徹底的に若者をスポイルする反社の魔手にオジさん精鋭刑事が挑むリアリズム!!
主役の刑事たちよりもあくまで事件主体というスタンスが、主要人物の個性が強くてナンボの現行の刑事ドラマと真逆のアプローチのため、のめり込みにくい部分は正直有りましたが、一方で当時の風俗や社会問題、あるいは警察と反社との対立具合が垣間見られ、今現在と似て非なる若者の空疎さが身に染みる脚本はなんともユニークでした。非常に地道で地味な捜査シーンの連続も今の世に於いては新鮮そのものです。
というわけで、実に地道に一つ一つ手掛かりを見つけて当たっていき、新しい証言が出る度に裏を取り、逐次捜査本部で集まって話し合い、少しずつ少しずつ真犯人に近づいていきます。
途中で同時多発的に捜査が劇的展開したり、容疑者が消されて新たな問題が発生したり、あるいは犯人グループの悪巧みの場に刑事が居合わせたりといった展開の盛り上げ用のミラクルや緩急の付いたアクションは見られません。
それを退屈と言ってしまえばそうなのですが、終始テンポが良くあるいはスピーディーで観客の興をそそるように矢継ぎ早に展開される過剰にドラマ的な現代の刑事ドラマに比べ、テレビ黎明期に於けるコマーシャライズされていない事件ドラマの妙味が詰まっていると考えれば非常に意義深いものです。"ドラマドラマしていない事件""ドラマドラマしていない刑事"とでも評すればいいでしょうか。
東京の闇に呑まれる人々と貰い忘れたお釣り
上野駅発の東北行き列車のホームで、女性が刺殺された。目撃者を探す上野署の刑事たち。
駅員の証言で、女性の持っていた白いカバン探す過程でのやり取りや当時の駅で暗活する人物模様などもグランドホテル形式で手際良く交差させていく演出は中々の出来。
上野駅が舞台なので、東北からの出稼ぎ者たちの姿が多く描かれ、東京の闇に呑まれる人々が、多く登場する。
芦田伸介などのテレビ版の出演者の他に、目立つのは、大滝秀治(若い!けど老練感あり)の刑事が、聞き込みで、証言の再現して地面に這い蹲り、適当な目撃者に怒るところなども面白い。
笹森礼子が身を持ち崩して、連れ込み売春宿の女になっているなとの悲喜。
でも笹森礼子が居るなら、自分も行きたい。(オイ!)
全編を通じて音楽がないドキュメント的で結構リアルな作劇だが、権利の関係か?七人の刑事の有名な男性ハミングのテーマ曲が流れないのは、買い物してお釣りを貰い忘れた感じで、ちょっと残念だけど。
池袋の新文芸坐にて企画特集。
「昭和の刑事が見た風景」の二本立ての一本にて
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