逃亡
劇場公開日:1965年6月5日
解説
「肉体の門(1964)」の棚田吾郎がオリジナル・シナリオを執筆、「路傍の石(1963)」の家城巳代治が監督した社会もの。撮影は「黒い猫」の西川庄衛。
1965年製作/100分/日本
原題または英題:The Flight
配給:東映
劇場公開日:1965年6月5日
ストーリー
終戦直前上官の強制命令で、捕虜の処刑に立ちあった堀内靖は、戦犯裁判を受けるため、法務局を訪れた。玄関先で通訳の畑中に会った靖は、裁判が正当性を欠いていること、無駄な死をやめて、日本再建に力添えすることの方が意義があると説かれた。士官学校時代の教官安斎中佐を訪ねた靖は、やはり追われる立石と上原に会い、日本の警察がMPの手先となって、戦犯容疑者を追っていることに腹を立てた。靖は、いよいよ逃亡生活を始める決心をした。立石の所に身を寄せた靖は、許婚者香取愛子と結婚した。その頃上原が捕まった。危険を感じた靖は身重の愛子を連れて開拓村へと逃げた。やがて、子供が生まれ、和男と名づけられた。荒野での生活を案じた靖は、愛子を実家に帰した。待ち構えた刑事の尋問にも、愛子は口を割らなかった。だが捕まった立石の口から、靖の隠れ場所がバレた。開拓村に戻った愛子は、絶望して自決しようとする靖を、「どこまでも逃げよう」と励ました。逃げる親子に、刑事は追及の手をゆるめなかった。やっとの思いで東京にたどりついた靖の生活は苦しかった。食物にありつけない苛だたしい毎日に、靖は肉体労働に骨身を借しまなかった。その頃、和男が病気となり、靖は貧しさのみじめさを痛感した。警察の手は靖に追っていた。逃げるのに疲れた靖は自首を考えた。だが愛子が無理がたたって喀血したのを知ると、靖は山奥へ転居した。三人の静かな生活が続いた。だが愛子は、講和条約が締結されれば戦犯が解除されるのを信じて、息をひきとった。靖は手を通すことのなかった花嫁衣裳を愛子にそっと羽織ってやった。