馬鹿が戦車でやって来るのレビュー・感想・評価
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話せば分からんのか?この連中は…
時代背景も含めて、ここまでオーバーではなくとも、終戦15年経った頃はこんな風情だったのかと想像する。
テレビも電話も出てこない。駐在さんの自転車が原動機付いてるみたいで悪路をしゃあああっと走っていくのを見るとこんなもんあったんだと軽い驚きがあった。
作中の人物たちは貧乏人の貧しさが心まで貧しく、より貧しいサブ一家をバカにしている様は観ていて気持ちのよいものではない。
サブの一家を散々バカにしていながら、村のもの達もこぞってバカばかりしかいない。
サブも昔から仲が悪いのか?友人も全く居ない様子だけどそれなりに“サブは大変”と言う認識はあった様子なのにそこに折り合いもつけられず、あの態度では、村のものからは係わり合いになるのを避けられるのは仕方ない。
議員の市之進が小狡くサブの一家から畑を奪い取った流れはいつの時代も変わらない。
今だって奪う側がルールを作って合法的に奪っているだけだ。
奪われる側も弱いから仕方ない…と諦めてる世界で、反旗を翻す事も容易に出来ない。
この当時は暴力的な革命も“アリ”とされた風潮もあったのだろうから、元少年タンク兵が騙され、バカにされた末の“逆噴射”、タンクで村の気に入らない奴等に突進を繰り返すと言うサブに共感する気持ちも湧いたのかもしれない。
この作品を山田洋次監督作品として面白いと紹介する映画雑誌を昔からよくみかけたので観賞したが、滑稽な悲劇であり、サブのタンクによる騒動で暴き出された村の姿で人々は多少改まるかと思いきやそうならないと言うどうにも変わらない残念さがこの作品のキモなのだと思う。
サブが残したタンクの轍からとなり町への道は出来たものの、人の心情は変わらず、綺麗なお嬢様(岩下志麻)は町医者と結婚…知的障がいの平六と畑を失ったサブは母親と何処かに消えたと語られるのが切ない。
何一つ笑えない。
この監督の本音な映画。ヒューマニズムの欠片もない。無教養、貧困を笑い者にする。差別用語を平気で使う。
お嬢様に対して、庶民を『肥やし』と比喩する。そして、お嬢様は教養ある『医者』と恋に落ち、無教養の『馬鹿』が恋に破れ、ヤケをおこし、人生を駄目にする。ネタバレになるが、あの『○○はつらいよ』の予定調和なネタ。そして、あの映画のネタ元は、ここにある。
何一つ笑えない。
差別。ねたみ。ひがみ。暴力。陰口。偽善。それを笑い者にする。何が面白いのか?
『○○はつらいよ』はこう言った映画である。50作も続けるなんて、日本の恥だ。アイロニーとして描いているとしても、それで差別が払拭される訳ではない。
何回か見たが、親父の好きな映画だった。もう、見たくなかったが、親父の月命日だったので、もう一度見た。もう、二度と見ないだろう。
死んだキャラクターが、ご存命なのが唯一の救い。
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