ぐれん隊純情派のレビュー・感想・評価
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人情家のチンピラとあばずれ達が大衆演劇界に殴り込み!! 芝居か、女か・・・いや、両方だ!の傑作人情喜劇映画
巨匠増村保造監督による傑作人情喜劇で、ベテラン職人監督の手によるとご都合主義もこんなに快く楽しめるものかと感服した次第です。俳優陣についても当時の人気実力伴った若手とベテランが贅沢にキャスティングされ、イメージ通りあるいは意外な役どころで出演されていて楽しませてくれました。
冒頭で頭が逮捕されたことによる弱体化で他の組に乗っ取りを受ける暴力団の様相が描かれますが、その下っ端構成員だった主役の若者三人の人となりが端的に描かれるくだりがますもって巧いです。"金をやるから相手の組の組長を刺してきてくれ"と女将さんに懇願されるもしり込みする豊(千波丈太郎さん)、恋人と結婚したいが持参金でカッコを付けたいものの常に金欠でうだつの上がらない松(藤巻潤さん)、そして大衆演劇の花形を父に持ちながら継母とその情婦が実質切り盛りする座がイヤで飛び出した銀之助(本郷浩二郎さん)・・・それぞれ堅気の生き方は出来ないもののかといって極悪にも染まれない気の良い若者たちで、のっけから感情移入させてくれます。
そして隠居状態だったものの彼らの荒々しくも一旗揚げてくれそうな意気に乗せられて芝居の指導をしてくれる雁右衛門こと二代目中村鴈治郎さんが全編通して素晴らしい貫禄を見せてくれます。
また、彼ら一座の父親役が鴈治郎さんなら、母親役は物語の後半舞台の上州の興行の顔役お梅さんことミヤコ蝶々さんでしょう。町のドンである病院長とその顧問弁護士からの圧に屈せず若い彼らの心意気に味方する気骨ある老婆役はまさにうってつけでした。
若い男女がその道の重鎮たちの卑劣な嫌がらせにもめげず、助け合って苦難を乗り越えて笑い合う姿は実にベタながらそれだけに普遍的な朗らかさとエネルギーを感じさせます。一座の金銭難を打破するために上京して組長を刺してまで皆のために金策した豊の冒頭との変わりように胸が熱くなります。60年代前半ということでそろそろテレビが娯楽のメインストリームに台頭してくる頃で現実的には大衆演劇は斜陽期だったのではと察しますが、敢えて往年の娯楽の王道を若者の夢の受け皿としたことでリスペクトを示したのかもしれません。
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