十代の河
解説
渡部道子のオリジナル・シナリオを前作「泣くんじゃないぜ」につづいて森永健次郎が監督する青春歌謡もの。撮影は「機動捜査班 東京暴力地図」の藤岡条信。
1962年製作/日本
ストーリー
うら若い幼稚園の教師、田村純子は意欲に燃えて多忙な日を送っていたが、教え子の八重子が父親の失職から休校しているのが気になっていた。八重子の父の坂本は純子の父と同じ太陽製機の工員だった。温厚で勤続十年余という熟練工であったが、入社前の前科が発覚したため純子の父である労務係長の田村に退職願を書かされたのだ。坂本を尊敬している若い工員、文男は坂本の救済運動を開始していた。坂本のアパートを訪れた文男は、そこで偶然純子に会った。文男の口から事実を聞かされた純子は、その夜父親を責めたてた。「お前はまだ若い、世間はそれほど寛大じゃないんだ」父と娘は激しく対立した。それから、坂本の就職のために文男と純子の奔走する日が続いた。坂本自身も求人先を歩いていたが、彼の心には次第に善意が失われ、世の中の全てのものが憎しみに変っていった。そして、ある鉄工所で冷たく断わられて逆上した坂本は、雇主を撲りつけて新聞ダネになってしまった。坂本の更生は益益不利になり、途方にくれた純子は最後の頼みと、コーラス会の友達だったアキラに頼むことにした。アキラは人気上昇の新進歌手で、ヒット曲“十代の河”はハイティーンを風靡していた。アキラの叔父が鋳物工場をしていると聞くや、純子は文男と訪ねていった。押し問答の末、二人の熱意が受け入れられて坂本の面接にまで漕ぎつけたのだったが……。ある夜、酔った坂本は夜釣り帰りの田村に撲る、蹴るの暴行を働いてしまった。だが田村は坂本の暴行を否認し続けた。同時に採用決定の吉報を手にした純子と文男は呆然と立ちすくんだが、意を決して坂本家を訪れた。醜い鬼と化した坂本の心も、二人の真意を悟り段々ほぐれていくのだった。