拳銃は淋しい男の歌さ
劇場公開日:1962年10月21日
解説
青山光二原作“巷に陽は昇る”より「夢がいっぱい暴れん坊」の松浦健郎と「ひとり旅」の中西隆三と竹森竜馬が共同で脚色、「事件記者 影なき侵入者」の山崎徳次郎が監督したアクションもの。撮影は「銃弾の嵐」の峰重義。
1962年製作/85分/日本
配給:日活
劇場公開日:1962年10月21日
ストーリー
久世組幹部、稲木三郎が拳銃で小野田組社長と老幹部・鉄五郎に重傷を負わせたのは五年前だが、今は刑に服し二度と拳銃を握るまいと誓って出所した。一方、久世組は以前の久世組ではなく、久世興業となり乾分の拳銃の名手多巻健が羽振りをきかしていた。キャバレー“スリーエース”の社長久世は稲川の出所を喜んで迎えたが、健は敵意の眼を光らせていた。小野田組の方では現在やくざ界から足を洗い、弘と姉文江は堅気に生きることを考えていた。鉄五郎はそんな二人を喜んでいた。当の稲木は妹の正子と五年ぶりに会った。彼女は岸本という刑事と近々結婚するはずだった。ある日、故障した文江の車を稲木は直してやった。そのお礼に彼女はダンスパーティの招待券を送った。数日後、稲木は久世と健に密輸品荷揚げの協力という形で拳銃をつきつけられ、連行された。その夜、健は突然稲木を海面に突き落し銃弾を浴びせた。その報告を聞いた久世は満足気に札束を健に渡した。が、そこへ突如現われたのは何と稲木だった。そして呆然とした二人を前に札束を掴んで姿を消した。稲木はその金を正子の結婚祝いに送った。淋しく去った稲木は街はずれの倉庫街で鉄五郎たちに囲まれた。鉄五郎は無抵抗な稲木に往復ビンタを張り稲木を許した。そこへ弘が駈けつけ以前大学のグライダー練習中事故を起し救助された命の恩人として、うちの会社へ来てほしいと言った。稲木は感動した。翌日から、稲木の加わった小野田運輸はすばらしい活気を呈した。それを知った久世興業は再三嫌がらせに来たが見事稲木が押さえた。が、久世らは正子を誘拐して稲木を呼び出した。駈けつけた稲木と弘は健に拳銃で殴られトラックの運転台にほうりこまれた。惨忍な健はそのトラックを海の断崖へ走らせる計画だ。そのころ、岸本刑事をのせたパトカーが断崖へ向った。落下寸前、意識を取り戻した稲木と弘はブレーキをかけた。あとは稲木の得意の抜き射ちが、久世、健らを倒した。が、凄絶な拳銃戦のあと後悔と孤独が稲木の心を襲った。稲木はひとり淋しく笑った。「ついにハジキを使ってしまった。ハジキを握る奴なんか意気地ねえ、淋しい野郎なんだ……」