のこされた子とのこした母と
劇場公開日:1962年5月27日
解説
「雨の九段坂」の浅井昭三郎のオリジナル・シナリオを「黒い三度笠」の西山正輝が監督した社会ドラマ。撮影は「すっとび仁義」の竹村康和。
1962年製作/69分/日本
配給:大映
劇場公開日:1962年5月27日
ストーリー
筑豊炭鉱地帯のある町。炭住街と呼ばれる棟割り長屋の住人は、誰も彼も暗い疲れた表情をしていた。炭鉱の不景気から人々の生活はすさみ放題で、ある者は賭け事に、ある者は遊楽の巷へと流れて行った。山口ちか子の家も、夫直吉が働いていた鉱山がつぶれ、六人の子供をかかえて日傭いと失業保険とでやっと生命を支えていた。律気に働いて来た直吉は仕事を失った反動で飲めぬ焼酎で日を過した。失業保険も酒に使ってしまう夫と六人の子供。ちか子の日傭だけではとても食べられなくなった。そんな折、一月以内に炭住から立退くようにとの通知が来た。ちか子の耳には子供を捨てて逃げ出す親の話などが入りこんだ。彼女はどうにもならぬままに一生懸命働いた。昼は日傭、夜は屋台そばの手伝。子供達も皆仲良く、明るさを失わなかった。だが不景気風はつのるばかりで、ついに追い立ての日もやって来た。途方にくれたちか子は、子供達と死ぬことを考えたが、子供には未来があると思いなおすのだった。子供の生命を守るためには子供達を捨てる以外になかった。子供達は泣き叫びながら居なくなった母を必死にさがし歩いた。やがて児童院に引きとられた兄妹はいつか母が迎えにくるのを夢みて生活していた。そんなある日、淡路島で女中働きをしている母から電話があった。長女の佐喜子は弟妹たちに囲まれて受話器を握った。母は佐喜子と下の三郎と滋を引きとると言って来た。母としてはそれが精一杯だったのだが、佐喜子は母への不信をぬぐい去れなかった。六人のうち三人だけが発つ日、発車間際に佐喜子は自分の代りに英男を車中に押し込んだ。六人兄妹のうち三人しか乗れない汽車、佐喜子にはどうしても理解出来ない怒りがこみ上げて来るのだった。