花の歳月
劇場公開日:1962年3月28日
解説
畔柳二美原作の同名小説を谷口葉子が脚色。「都会の魔窟」の中島義次が監督した清純物語。撮影は「街に気球があがる時」の山崎安一郎。
1962年製作/70分/日本
配給:日活
劇場公開日:1962年3月28日
ストーリー
とある県道の工事飯場。作業員の娘ひろ子は病気の父を看病するかたわら、炊事係として働いているが、実家から母と弟を呼びよせることにきめた。毎日、汽車の着く時刻に、彼女は駅へ迎えに出た。だが、昨日も今日も母は来ない。消然と飯場へ帰って行く彼女の姿は、村人の同情を集めた。そんなある日、ひろ子をオートバイで飯場まで送ってくれたのは、お寺の一人息子元享である。彼は住職を継ぐ気がなく、大学で勉強したいと思っている。二人の噂は、忽ち飯場にひろがった。作業員たちはひろ子に、あんな不良とつき合うなと戒めたが、彼女は元享を優しくて親切な人だと思った。幾日経っても、母は来なかった。やがて、弟の隆が母の骨壷を抱えて来た。ひろ子と隆の看病もむなしく、父はこの世を去った。みなし子になった姉弟は人夫頭木村の情けで、炊事湯の隅に寝泊りを許された。ひろ子が炊事しごとの合間に、寺の庭の花を売り歩くようになったのは、元享の尽力による。一束三十円の花は、飛ぶように売れた。健気なひろ子を見て、自堕落な生活を反省した元享は、木村に頼んで飯場で働く身となった。父の和尚は、息子のそうした感傷的な行動が気に入らない。ところで、村人たちが続々と病気で倒れるという事件が起きた。それも、ひろ子の花を買った家ばかりなのだ。迷信深い村人たちは「ひろ子に狐がのり移った」と騒ぎ出した。かげになり日向になり、ひろ子をかばって来た小林医師や作業員たちは説得につとめたが、村人たちは「ひろ子を追い出せ」と飯場へ押しかけた。姉弟は、荷物をまとめて裏口から逃げた。夜の田舎道で、背後から声をかけたのは元享だ。彼のとりなしで、姉弟は元享の縁続きの寺に引き取られることになった。志をひるがえし、他の寺へ修行に出かける元享は「ぼくもよそへ行くんだ。おたがいに頑張ろうや」と、ひろ子を励ますのだった。