尾張の暴れ獅子

劇場公開日:

解説

野村胡堂の『万五郎青春記』より「天竜母恋い笠」の棚田吾郎が脚本を書き「お役者変化捕物帖 弁天屋敷」の河野寿一が監督した時代劇青春篇。撮影は「右門捕物帖 南蛮鮫」の伊藤武夫。

1961年製作/86分/日本
配給:東映
劇場公開日:1961年2月1日

ストーリー

八代将軍の座をめぐって尾州、紀州の両家は激しく対立、紀州から吉宗が将軍の座についてもまだ暗闘は続けられていた。尾張の当主徳川継友は大飢饉に苦しむ領民救済のため、弟万五郎の策を容れ城改修使役によって年貢を免じた。無断の城改修は禁制である。公議隠密小川東馬は改修個所の絵図面を幕府に送らんとした。尾張藩士によって東馬は斬られたが、絵図面は息子乙女之助、娘お夏の手によってどこかへ運び去られた。事の重大さに継友は江戸表にある万五郎に急使を送り善後策を図った。尾張藩下屋敷では武術鍛錬に余念のない偉丈夫、豪毅英遇をもって知られる尾張の暴れ獅子万五郎宗春がいた。またこれを監視する公議隠密総元締薮田助八と側用人加納遠江守。そして万五郎を心配している許嫁の深雪と忠臣鬼塚藤太もいた。万五郎は庄蔵少年よりお夏が御用船天神丸に乗ったことを聞き、公議隠密より一足先きにお夏を品川船着場に捕えた。万五郎はお夏の態度から絵図面は尾張縮緬の中に隠したことを知ったが、千八百反の縮緬はすでに江戸市中に流れてしまっていた。尾張藩士、一方では助八の配下が市中に散った尾張縮緬の買占めに狂弄した。小唄師匠の文字花は顔役の伝七から尾張縮緬を貰うが、その中に尾張家より賞金の出ている絵図面を発見した。知らせによって万五郎が駈けつけた時はすでにおそく文字花は殺され絵図面は伝次によって奪われていた。千両箱と引換えに呼出しをかけた伝次に逢うべく州崎の埋立地に出向いた万五郎は乙女之助らに襲われ、伝次は深傷を負い絵図面は深雪に渡った。絵図面を前にして深雪は、父摂津守が遠江守と結び助八の力をかりて継友を落し入れ尾張乗取りを企んでいることを知って愕然、万五郎にわびのため自害した。そして摂津守還暦を祝う観能の宴、弁慶を演じる継友に知盛の面をかぶった助八が斬りかかった。あらかじめこれを知っていた万五郎は危機一発、手裏剣で助八を倒した。遠江守もまた万五郎の豪剣に倒された。一切を知った将軍とも和解はなった。摂津守は深雪の死を悼たむ万五郎の温情によって救われた。深雪の墓前に立つ万五郎の背には、名古屋城の金鯱が美しく照り輝いていた。

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