まことちゃんのレビュー・感想・評価
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昭和後期という時代の精神的地層を色濃く映し出す文化的事件
映画『まことちゃん』を評するにあたり、まず念頭に置かねばならぬのは、この作品が単なる児童向けアニメーションの範疇を軽々と逸脱し、昭和後期という時代の精神的地層そのものを色濃く映し出す文化的事件であった、という事実である。楳図かずおがギャグ漫画という軽佻浮薄の器を借りつつも、そこに注ぎ込んだ不条理と猥雑、そして異様なまでのエネルギーは、当時の大衆文化において比肩するものがない。映画版はその奔放さを一切希釈することなく、むしろスクリーンという巨大なキャンバスに拡張し、鑑賞者を“笑い”と“嫌悪感”の微妙な狭間に放り込むことに成功している。
芝山努の演出は、テレビシリーズ的断片性の批判を免れ得ないものの、むしろその断片性こそが、本作の内包するカオスを純粋に顕現させる装置として機能している。色彩設計の異様なビビッドさは、楳図かずおの原作が持つグロテスクな生命力を巧みに可視化し、観る者を「滑稽さ」と「狂気」の境界線へと導く。つまり、まことちゃんが垂れ流す鼻水ひと筋にすら、戦後日本の抑圧された欲望と解放への衝動が凝縮されているのだ。
ここにあるのは決して単なる不良幼児のドタバタ劇ではない。むしろそれは、社会規範という名の薄氷を踏み破り、笑いの名を借りて人間の根源的な卑小さと滑稽さを照射する“寓話”である。『まことちゃん』は下品であり、乱暴であり、同時に救済である。この相反を矛盾としてではなく、むしろ美学として提示しえた点において、本作は稀有な映画的成果を成し遂げていると言えよう。
要するに『まことちゃん』とは、芸術と俗悪、笑いと嫌悪、アニメーションと生のリアリティ、そのすべてを同時に飲み込む「昭和ギャグ文化の総体」なのである。真にこの映画を理解するとは、その鼻水まみれのイメージに、同時代を生きた我々の滑稽で哀切な肖像を見出すことである。
――これほど“下品で崇高”な映画が、他にあっただろうか。
楳図かずお先生を偲んで
楳図かずお先生
2024年10月28日胃癌により88歳で他界
代表作『漂流教室』『14歳』『洗礼』など
監督は『がんばれ!!タブチくん!!』『映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城』『映画ドラえもん のび太の魔界大冒険』『ちびまる子ちゃん』『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』の芝山努
脚本は『がんばれ!!タブチくん!!』『花の子ルンルン』『じゃりン子チエ』『ドラえもん ぼく桃太郎のなんなのさ』『帰ってきたドラえもん』の城山昇
1980年公開作品
初のアニメ化
薬師丸ひろ子主演『跳んだカップル』と同時上映された
元々は山口百恵主演『古都』と同時上映するはずだったが引退作ということもあり単独上映が決まった
ならば『翔んだカップル』単独で上映すればいいだろうと自分は思うのだが当時の現場はそういう発想がなかったのか急遽この作品が制作された
元々『まことちゃん』のアニメ化計画はあったのだが内容が内容だけに保留になっていたのかもしれない
突然空いてしまった枠をヤケクソで制作にゴーサインを送った映画会社
青天の霹靂に念願叶いノリノリの原作者楳図かずお先生はシンガーソングライターとして主題歌を歌いkazuというキャラで出演する愛情がこもった肝入り作品
突貫工事のわりにまあまあいいんじゃないの
原作ってだいたいこんな感じよ
全く知らなかったが『まことちゃん』はまことちゃんの祖父が主人公の『アゲイン』のスピンオフ作品だった
アゲインはおじいさんが若返りの薬を飲んで高校生になる話
スピンオフの方がメジャーになってしまった
なぜか本人役でツービートも登場
楳図かずお先生が厳選したであろう原作の各エピソードをアニメ化
近所の奥様たちも招いて自宅でまことちゃんと姉の美香で出し物をするエピソードが好き
特にパパとママのアソコの絵を活用するクイズが特に好き
同時代の『がきデカ』を彷彿させるが『まことちゃん』は下品の中に気品を感じる
『がきデカ』の方はどこまで行っても下品だが下品の先に文学を感じ取れる
そこに違いがある
なぜか「ぐわし」より「さばら」推し
何が1番驚いたって楳図かずお先生が亡くなった年齢88歳!
吉祥寺のまことちゃんハウスは国の重要文化財として手厚く保護しろ!なのら
声の配役
幼稚園児の沢田まことに杉山佳寿子
まことの姉の美香に吉田理保子
まことのパパに柳沢真一
まことのママに小原乃梨子
まことのおじいさんに千葉順二
まことのおばあさんに中島喜美栄
幼稚園の先生の花子に水沢有美
スキンヘッドの幼稚園児のモン太に堀絢子
まこと虫に肝付兼太
彼氏の新田と別れるも元鞘で結婚することになった大山友子に岡本茉莉
工事現場のおばさんに青木和代
近所のハゲ眼鏡のおじさんにたてかべ和也
色彩だけが良い
当時はとんだカップルと同時上映だった
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