模型の国

劇場公開日:

解説

16ミリで魯迅の「阿Q正伝」をモチーフとした劇映画「阿Qの庭」(45年)とフォーク・ソングのシンガー・ソングライター高田渡の生き方を追ったドキュメンタリー「吉祥寺発赤い電車」(47年)を撮ってきた無援舎の第三作。無援舎は、明治学院大学映画研究会のOB9人によって結成されている映画製作グループ(16ミリ)

1975年製作/24分/日本
配給:その他
劇場公開日:1975年10月18日

ストーリー

。“日本国長崎県西彼杵郡高島町端島”--通称“軍艦島”は、高さ一〇余キロメートルの強固な防波堤に囲まれた、面積〇・〇六四平方キロメートル、周囲一・二キロメートルばかりの半人工的な小島。高島砿業所端島砿と呼ばれるこの島は、全島が三菱石炭鉱業株式会社の所有地である。明治23年に端島に乗り込んだ三菱資本は、昭和48年9月の廃鉱まで80年間、この島の地下の石炭を掘りつづけてきた。「模型の国」のスタッフは廃鉱から8カ月後、かつての無人島に立ち戻ってしまった端島に潜入して、死の町の風景を淡々と撮ってまわる。撮影は50年5~6月。完成は8月6日。地面に落ちている人形の手、そして首。ブランコ。誰もいない部屋に、ミシンが置かれて仏壇がある。閉鎖された坑道の入口の左端に取り払われずにある神棚。小学校の教室の壁には子供たちの似顔絵が貼られたままだ。病院の病室に並ぶ裸のベッド。共同浴場の乾いた湯船。パチンコ屋の床には、パチンコの玉がいっぱい落ちている。入場料大人100円、子供50円--と表示された映画館の切符売り場。鉄筋コンクリートの社宅の階段には錆びた自転車が放置されている。そうして最後に、島の全景がズーム・バックで映し出されて、映画は終わる。上映時間24分。……「模型の国」の画面には、端島あるいは軍艦島という具体的な島の名前はどこにも出てこない。日本のどこかにある、小さな島ということがわかるだけである。それは、この映画のスタッフがわざとそうしたのだ。「模型の国」は、軍艦島の単なるドキュメンタリーではなく、“近代日本の壊死の象徴”である或る小島生活共同体が完全に崩壊してしまった廃虚の島を冷静に撮った予言的な記録映画なのである。

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